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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第22回

上級マネジャーの役割(マネジメント体制の再整備)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「上級マネジャーの役割について、だいたい教えてもらったと考えて良いでしょうか?」

「もう幾つかあるな。正確には・・・あと2つだ。まず、マネジメント体制の再整備だ。」

「マネジメント体制の再整備ですって?それは何ですか?」

「もちろん、言葉の通りだよ。」

「もう少し、噛み砕いて説明してみてください。」


マネジメントをコントロールするためにシステムをも見直す

「以前、マネジメント・コントロールの意味を考えてもらったよな。」

「コントロールとは、得たい成果を得られるように、行うべきことを調整することでした。マネジメント・コントロールとは、マネジメントによって得たいと思う成果をきちんと得られるように、マネジメントを変えることを意味していました。」

「良く覚えていたな。そのマネジメント・コントロールを上手くできるようにシステム化するというのが、もう一つの肝だ。システム化については、覚えているか?」

「スミマセン。あまり、覚えていません。」

「確かにな、少し覚えにくだろうから仕方ないよ。」

「今日はやけに優しいではないですか?何かあったのですか?」

「それは余計だ。」

「部長も、だんだんと変わってきたんですね。」

「最近、中川課長の言うことは、本当によく分からない時があるよ(笑)。」

「で、システム化ですが。」

「システム化にはいろいろ意味があるが、特定の目的を実現するために組織や社会をシステム化する場面に限っていうと、担当者と役割を明確化した上で、うまくいかなかった場合にはコントロールできる仕組みを備えることだと言える。」

「そう仰っておられましたね。」

「つまりマネジメント体制の再整備とは、マネジメントをコントロールするためにシステムをも見直すことだと言えるだろう。」

「なるほど。」


システムを見直す:情報システム

「では、システムを見直すとは、実際には何を意味していると思う?」

「マネジメント・コントロールは、組織構造とか、特定のポジションに与える権限などを決めることでシステム化していくことになると思います。それを見直していくということですか?」

「そうだな。誰がどんな意思決定をするかとか、そのために情報をどのように提供していくかの規則などを作ることは、マネジメント・コントロールをシステム化する重要なやり方だと言えるだろう。」

「こうやって復習してみると、システムをコントロールするという意味も分かってきたような気がします。ある意思決定が思った通りの成果をあげなかった。その理由は、決裁者に必要な情報が届いてないからだと判明した。そういう場合には、意思決定権者に必要な情報が届くように、情報システムを作り変えたりするのですね。」

「その通りだ。ただし、ITで構築した情報システムだけじゃないぞ。例えば、関係者が一堂に会するミーティングをセットすることに決めるという方法もある。そこで報告されるべき情報をプロトコルとして決めることもできる。」

「なるほど。」


システムを見直す:決裁権者

「情報システムだけでなく決裁権者を変えるという見直し方法もあるぞ。」

「仰ることは分かりますが『現場のことは現場で決める』、それが原則ではないでしょうか?変えた方が良い場合が、あるのですか?」

「確かに『現場のことは現場で決める』ことが原則なんだろうな。しかし、ある仕事については特定の現場が自分たちの都合だけで決めてしまうと不都合が生じるかもしれない。」

「周囲の現場にしわ寄せがいくのですね。そういうことって、結構あります。」

「この場合、周囲の現場に影響が出やすい事項については、それら現場も統括するマネジャー、つまり関係する現場を包含する高位のマネジャーに決裁権限を移すという方法がある。」

「確かに、そうすれば必ず周囲の現場のことも考えられるようになりますね。」


システムを見直す:組織構造

「でも、関係するのが周囲の現場ではなく、部署や部門を超える場合もありますよ。そうしたら、これらを包含するポジションに行き着こうとすると社長まで行ってしまうかもしれません。」

「社長は大げさだと思うが、でも、そういうことってあるだろな。購買部や製造部、営業部をまたいだ問題なんだけど、役員決裁にするほどじゃない。そういう問題だ。」

「そういう場合には、どうするのですか?」

「組織構造を変えるとことができる。例えば以前に我が社は、職能別の組織体制だったよな。」

「そうです。製品企画部、設計部、購買部、製造部、営業部などと別れていました。」

「でも今は、家庭用品事業、建設用品事業、輸出事業と別れている。」

「それは、顧客からの要望をきめ細かに対応するためです。製品企画部、設計部、購買部、製造部、営業部などと別れていると、営業部が聞いてきた顧客からの要望が他部には届き難いのです。」

「そう、つまり製品企画や設計、購買、製造に関わる意思決定の場面で営業が持っている知恵やノウハウをきめ細かく盛り込むことができるよう、組織構造を変えた訳だ。同じ製品に関わる製品企画、設計、購買、製造、そして営業の担当者を一つの組織にまとめあげることによって、より質の高いマネジメントを目指した訳だ。」

「モヤモヤとしていたものがクリアになりました。それがまさにマネジメント体制の再整備だったのですね。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

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