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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第13回

上位マネジャーと現場マネジャーとの区切り

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「先回、上位マネジャーと現場マネジャーは、それぞれ複数の階層にまたがっているとお聞きしました。」

「そうだな。」

「我が社の場合には、現場マネジャーは部長から課長まで、上位マネジャーは部長よりも上にある複数階層のマネジャーだということになったと思います。」

「その理解で、問題ないだろう。」

「そこでまた疑問が生まれたんです。この両者を区切っているものは何だろうかと。部長よりも上にあるマネジャーというと、我が社の組織図でいえば事業部長ということになるかと思うのですが、部長は現場マネジャー、事業部長は上位マネジャーと分けるものは何なのか、知りたくなったのです。」

「それは良い質問だ、考えてみよう。」


パフォーマンスを決算書から読み解く

「さて、中川課長の質問に答える前に、俺の質問に答えてもらおう。会社じゅうの全てのマネジャーが上手くマネジメントを行っているかどうか、どうやって判定する?」

「そんなの、分からないですよ。会社じゅうの全てのマネジャーがどんなマネジメントをやっているか、それで思ったような成果が出ているかどうか、全てを監視するわけにはいかないではないですか!」

「そうかな。じゃあ、質問を変えてみよう。中川課長にはお子さんがいたよな。確か中学生だったような。」

「そうです。中二の女の子です。」

「その娘さんがよく勉強しているかどうか、どうやって判断する?」

「テストの点が良ければ、よく勉強していると思います。」

「あれ、こちらではよく分からないとは言わないんだな。いつも監視している訳じゃないとか。」

「いや、その。」

「じゃあ、元の質問に戻ってみよう。会社のマネジメントが上手くいっているかどうか、どうやって判定する?」

「決算書を見て、判断します。特段の特殊要因がなければ、きちんと利益が出ていれば上手くマネジメントができていると判断できます。という答えが欲しいのですね。」

「変な裏読みは、するなよ。」


決算書の特定部分について責任を問う

「さて、ある期にあまり利益が出なかったとする。さて、CEOとしてはどうする?」

「利益が出なかった場所や理由によります。例えば、家庭用品事業部門の利益低下が顕著で売上もひどく低下しているようなら、当該部門の営業部の責任を問うと思います。利益低下の原因が製造コストの高さにあるなら製造部の責任を問いますね。具体的には、これら部署を統括するマネジャーを呼び出すということです。」

「なぜ、それらマネジャーを呼び出すんだ?」

「それは、それらマネジャーが決算書の数字に責任を負っているからです。彼らが統括する部署での事業成績を集計したのが決算書です。決算書の数字を改善するには、それぞれの項目に責任を負っている現場部署に頑張ってもらわなければなりません。」


管理ポイントとしての「センター」

「そうだな。この、決算書の特定項目に責任を持つマネジャーのことを、MCSでは特別な存在と認識しているんだ。」

「その意図、分かります。マネジメントを考える上で『管理ポイント』になる訳ですからね。」

「そうだ。ということで、これらのマネジャーは特別な名前で呼ばれている。売上に責任を持つマネジャーのことを売上センター、コストに責任を持つマネジャーのことをコストセンターというんだ。」

「その言葉、聞いたことがあります。そういう意味だったんですね。」

「ついでに言うと、売上とコストの両方に責任を持つ、つまり利益に責任を持つマネジャーがいたら、それをプロフィット・センターという。以上は通常のオペレーションに関する責任だったが、投資まで含めて責任を持つマネジャーがいたら、それを投資センターという。」

「へーっ、投資センターですか?具体的にはどういうマネジャーですか?」

「例えば我が社では、工場に新たな生産ラインを設ける場合には経営陣の判断が必要だな。」

「もちろん、そうです。」

「でももっと大きな企業なら、現場の判断で新たな生産ラインを設けられると決めても、不自然ではないと思わないか?」

「確かに。我が社では1億円の投資は経営陣が決めなければなりませんが、例えば世界的に展開する自動車製造企業ほどの企業だったら、1億円の投資を工場長が決めても良いかもしれませんね。」

「そういうことだ。そして、これらをひっくるめて財務責任センターという。」

「確かに、決算書つまり財務諸表の特定項目に責任を持つ訳ですから、財務責任センターと言う名前はぴったりですね。」


財務責任センターが現場マネジャーのトップ

「さて、これでイメージが湧いたのではないだろうか?財務責任センターが、現場マネジャーのトップになる。それよりも階層の高いマネジャーが、上位マネジャーとなるわけだ。」

「財務責任センターが、現場マネジャーを統括しているのですね。」

「財務責任センターが現場マネジャーを統括しているとは、どういう意味だと思う?」

「そう言われてみると、うーん。」

「財務責任センターが特定の決算項目について責任を持つといっても、数字を作り出しているのはマネジャーではない。現場で働く人々だ。」

「そうですね。」

「そして現場で働く人々が上手く働いて芳しい数字をあげることができるか、それともあげることができないかは、彼らを直接にマネジメントするマネジャーが大きく影響している。」

「そうですね。我が社でいうと課長レベルです。」

「で、課長がうまくマネジメントするかどうかは、彼らをマネジメントするマネジャー、つまり部長が上手く機能しているかにかかっている。」

「確かにそうです。」

「現場を直接マネジメントするマネジャーから財務責任センターまで、そのような連鎖があるという訳だ。」

「なるほど。」

「こういう連鎖を形作り、機能させていくことが『現場マネジャーを統括する』という意味なんだよ。」

「そして、そういう財務責任センターをマネジメントしているのが、上位マネジャーなんですね。」

「そういうことだ。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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