Indo Watcher

第8回

「見渡す限り全部俺の土地!」の罠

木暮 知之 2016年2月18日
 

 モディ首相が「メイク・イン・インディア」構想を打ち上げてから久しくなるが、日系企業の中にもインドへ進出し、工場の設立を検討している企業も少なくないであろう。インド進出に興味を示す企業が増えたことは関係者にとっては良いニュースだと思う。今後インドの工業化が進めば日本企業にとっても大きなビジネスチャンスとなろう。

 

ところが、いざ日系企業がインドに進出を決めても、肝心の工場用地が確保できない、との話もよく聞く。経済発展が進む中、企業の用地買収のニーズは非常に高いが、それにはインド固有の難しさがある。

 

用地買収が困難となる理由の一つに、土地登記の曖昧さがある。どこからどこまでが誰の土地か、インドでは容易に分からない。日本のようなしっかりとした登記簿があるわけでもないので、境界線も曖昧のようだ。「ここからずっと向こうまで、見渡す限り全部俺の土地だ。」と言う持ち主がいたからと言って、安易に土地の売買契約でもすると大変だ。後から別の所有者が出てきたり、役所に問い合わせると所有権とは異なる境界線が提示されたり、挙句の果てには買収した土地用途が農地だったりする。こうなると、所有者と主張する人々と交渉したり、使途を農地から工業用地へ変更したりすることとなり、用地買収は非常に難しい。

 

中国では、国や地方政府がそこに暮らす住民を強制的に排除することがあるようだ。「ここにハイウェーを作るから皆退け」という具合らしい。しかし、インドではそうはいかない。農民の権利もしっかり守られている。そこは世界最大の民主主義国家を謳うだけはあるが、まとまった土地を確保しようとするものなら、何とも骨の折れる作業となる。

 

インドへの進出は、日本にとって魅力的なオプションの一つであることは間違いない。しかし、のっけから上記のような課題を背負うと、当初の思いとは裏腹に事業の成功に向けてのエネルギーも吸い取られてしまう。日系企業がインド進出を決意し、工場を設立しようと思うのであれば、少しでもスムースにオペレーションが立ち上がることを祈ってやまない。

 
 

プロフィール

ピーエムグローバル株式会社
代表取締役 木暮 知之

上智大学 比較文化学部卒 ボンド大学MBA

1991年東京銀行入行、ロンドン支店・投資顧問にて活躍した後、2000年にIT業界に転身。 米系ITコンサルタント会社を経て、2005年に日本初のグローバル・プロジェクトのマネジメント専門のコンサルタント会社「ピーエムグローバル株式会社」を創設。以来、数多くのグローバル・プロジェクトの推進に貢献する。

高校時代の留学から始まり、海外赴任、外資系企業での勤務、更にはオフショア開発等での経験から、異文化とのコミュニケーション能力に長け、グローバル・プロジェクトの推進に関しては定評がある。

海外では、外国人向けに日本人と上手く付き合うための「報・連・相」等のセミナーを行う一方、日本人にはグローバルで通用する人材の育成に携わる。

近年ではインドニュースの配信事業「インドウォッチャー」の編集者としても活躍している。

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