知恵の経営

第28回

超短納期で高収益を生む

アタックスグループ 2015年7月15日
 

 独自に見つけ出した「池(市場)」の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を獲得した企業を紹介している。11回目は「コレットチャックの町工場」としてジャスダック上場も果たした、エーワン精密を見ていきたい。

 1965年、東京都府中市で梅原勝彦・現取締役相談役が創業した。幼少時に父親の会社が倒産し、一家離散の苦汁をなめた。12歳から住み込みのでっち奉公としてねじ工場で働き、16歳で夜間中学に入った苦労人だ。

 製造業の基本である「QCD」すなわち、(1)高品質(2)低コスト(3)短納期-のうち、高品質は当たり前、低コストは実現しても価格で差別化するわけにはいかない。従って短納期に強いこだわりを持った。原則、午後3時までに受注したうち、7割はその日に仕上げ、「当日発送」する。この超短納期こそが提供価値である。

 生産拠点の山梨工場(山梨県韮崎市)では、顧客からの電話に担当者が「ワンコール内」で注文を取り、短冊に型番や個数、「急」などと太い赤ペンで手書きし「カプセル」に入れ、張り巡らされたパイプを通って作業担当者の元へ届く。この一連の流れは受注からわずか数分で、準備段階からして素早い。

 超短納期実現のためコレットチャックなど特定品目に製造を絞り込み、設備を限定している。一般に製造業では多めの在庫、稼働率の悪い機械設備、余剰人員は「悪」とされるが、この常識を覆し、設備、人、在庫ともに過剰に置いている。

 突然の注文に備えてあらかじめ半製品をつくり、受注後直ちに残された工程を、稼働率7割と余剰を持たせた設備を使って素早く作る。人の効率を一番に考えるからこそできる芸当だ。

 エーワンは発注の翌日に完成品を届けるが、他社に頼むと1、2週間かかる。超短納期は顧客を心から感動させ、一切値引き要求はない。

 売上高経常利益率は、工作機械業界は良くても10%程度とされるが、エーワンは創業以来、2008年までの38年間、売上高経常利益率35%超を持続し、09年以降、利益率は低下したものの、現在に至るまで20%を下回ったことはない。

 エーワンは、コレットチャックなどを「緊急に納<めてほしい」という超短納期を求める顧客に対して、その要望に応えることで大きな価値を生み出すことに成功した。顧客は喜んでこちらの定価を支払ってくれるため、高収益を上げることができる。これほどまで見事な「池クジラ」には、なかなかお目にかかれない。

<執筆>

アタックスグループ 主席コンサルタント・西浦道明

2015年7月15日「フジサンケイビジネスアイ」掲載



 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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