「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」

第9回

大競争と想定外の連続的変化の中での経営革新とブランドビジネス構築の事例

 

はじめに

第9回コラムのテーマは、弊社がハンズオン経営支援させていただいているサービス業の世界へ通用する持続的競争優位とブランド構築への経営革新の苦難の一年間の事例をご紹介したい。ポイントは、財務、マーケティング、組織の三位一体の経営革新とブランド力強化による付加価値創造と競争力、収益力強化を聖域なく長期に渡って革新、改善を実施することである。

事例:高いブランド力を持つサービス業

弊社顧問先は、城南地区で高いブランド力を持って展開しているサービス業である。顧問就任の依頼を受けた時期は、サブプライムローン発世界的金融危機による経済低迷による個人消費停滞により、急速に業績が悪化した時期であった。顧問先の経営者は、非常に堅実であった。しかし、起業後、そのサービスは、世界的な金融規制緩和によるバブルによって活況を呈しており、俺もがうらやむ大繁盛を謳歌していた。今、思い起こし、冷静に考えたらば、「バブル」であった。創業以来、毎期、急成長する売上を背景に借入金を増やし、事業拡大を順調に実施していた。顧客層も50%以上は、在日、駐在を中心とした高額所得者の外人と高額所得者の日本人であった。起業という観点から言えば大成功であった。

「想定外」の経済環境の激変

しかし、「想定外」の経済環境の激変が起きたのである。それが、サブプライムローンによる世界的な金融危機である。バブル経済を背景として事業拡大し、高止まりした固定費や原価は、売上減少に、深いボディーブローを受け、良質な財務基盤は一転して脆弱となっていた。理由は、個人消費の低迷、外資系金融機関の日本撤退などによる顧客数と単価の減少である。同時に、過去の「成功神話」に陶酔した従業員は、的確に経済環境の変化の事実を認識できなくなっていた。サブプライムローンによる不景気は、一過性の短期的な不景気と認識し、経営の抜本的な経営環境の変化を認識せず、甘い見通しによる意思決定を継続していた。しかし、結果として、その後、長期的な国内個人消費低迷となり、さらなる財務基盤の脆弱性を強めた。さらに、国内市場で、デフレスパイラルが起き、値下げによる過当競争も加速度的に進んでいった。もちろん、ハンズオン経営支援に入る前に、金融機関などによる指導から、人件費を初め削減できるコスト削減を徹底していた。そのコスト削減や縮小均衡は、「成功神話に陶酔した」従業員のモチベーションを、かなり下げた状態にあり、サービス品質の低下などの弊害も出始めており、組織力は低下し、経営の悪循環に陥る一歩手前であった。

本質的なリストラクチャリング

小生は、改めて、初めに迅速に、経営状況の分析と経営者と全ての従業員へのインタビューを行い、その分析結果を基に、全従業員に、現実の経営環境の事実認識を強力に理解促進に努め、経営革新の必要性を説いた。もちろん、前述のような状況下、抵抗勢力もおり、一時的には社内に喧々諤々の議論や不満が渦巻いた。3ヶ月くらい全従業員の意識改革や変化の必要性の統一に時間を掛けた。経営革新は、「成功神話」を壊し、0から俯瞰的に本質的なリストラクチャリングをしなければならない、一人一人の理解と覚悟が必要である。最後には、経営革新した後の戦略実行をできるように組織力を再構築する必要もあった。同時に、財務的には、外科手術も必要である。例えるのであれば、悪い腫瘍を外科手術で切り取り、漢方治療でゆっくり自然治癒力を回復させ、経営革新後の体制にスムーズに移行できるように、リハビリをするようなものである。財務基盤の改善は、ただコストを削減するだけで、一過性のものでしかない。つまり、継続的に安定した収益が確保できる体制・仕組みの構築とは違うのである。個人消費低迷、デフレ、恒常的な国内市場の縮小を背景に、メインの金融機関とじっくりと協議交渉し、経営革新を支援する財務的理解を獲得した。

その後、組織的には、経営陣としては、CFO、CTO、CSOや経営企画室の業務を担い、時には、人事部長や営業部長、IT事業部長として、中堅社員や若手社員の研修やOJTを実施しました。なぜならば、以前は、専門技能を持たない労働集約型での非効率な販売や営業、組織運営であったため、その脆弱な組織力は、業績悪化や景気変動への変化適応能力が弱かったのである。しかし、事業を戦略通りに実行、推進するのは、人材です。結論としては、学歴はさておき、専門技能を持ち、企業理念に共感共鳴し、仕事をしてくれる人材をまず、何よりも優先して積極的に登用し人材を徐々に入れ替えていき適切な組織内の人材間の競争や組織の浄化を実施しました。同時に、正社員として雇用する人材は、「コア人材」となるべく研修、OJTによって意識改革を促し、継続的に強化をして組織力を向上させました。その結果、業務効率の良い組織に変化させ、経営陣、デジタルマーケティング、商品製品サービス開発などの管理職にコア人材を集中させました。その結果、デフレが更に加速させる経済環境下、商品、サービスを一切、値下げせず、高い顧客満足度を維持できる体制に移行できました。

抜本的な収益力強化

その後は、抜本的な収益力強化のために、聖域なき原価管理、販促宣伝費、物流費、IT関連費、施設管理費などの費用管理強化を実施。特に、マーケティング体制のコスト削減と効率化、つまり、販促宣伝費、IT関連費の費用対効果も同時に実施しました。上記でも不足した経営機能は、能力のない人材による自前で実施せず、アウトソーシングで良質で低コストのサービスを選択し、コア人材に管理させるように組織構成や人件費や外注費の使い方も変え業務効率を向上させた。

さらに、その中小企業に合った、人事評価制度の整備、経営陣が直接、コミュニケーションを継続的に丁寧に実施することによる経営理念への理解促進、モチベーションの高いコア人材には、レベルを洗練させることを経営者自ら実施し、その結果、より意識が変化し、収益性の改善は、難しいものではありませんでした。むしろ、専門技能のない、意識の低い正社員が、どんなに給与が安くても何人いても収益力は改善しません。なぜならば、経営者と同じ意識ではありませんから、コスト意識や業務の効率化や改善、リスクテイクした企業の成長への貢献には、全く興味がありませんでした。

同時に、上記のコア人材は、アルバイトやアウトソース企業の担当者、契約社員、派遣社員を管理していく立場でもあります。ここで、最も注意すべきことは、コア人材への投資です。具体的には、研修やOJT、権限委譲によるキャリアの育成です。さらに、重要なことは管理職としての人材育成、能力開発です。コア人材は、非コア人材一人一人に、リーダーシップを熟成させ、主体的に、かつ積極的に仕事に対するこだわりを持たせる責任感を徐々に熟成させていきました。

コア人材の管理職として最も重要な役割が、上司・先輩としての日常的な指導・サポートです。具体的には、リーダーシップがある、お客様や後輩に配慮し話しかける、困っていたら手助けする、改善点を見つけたらすぐに改善することである。同時に、親切、丁寧に指導することである。つまり、後輩や部下、取引業者、アウトソーシング担当への対応は、組織内外に反映されます。人は、「自分が扱われたように人を扱います」

つまり、顧問先企業に合った人材育成プログラムを作成し、プラグラムを通してコア人材が中心となり推進することが重要です。その結果、スキルが効率よく身につき、働き甲斐ややる気、さらには、仲間との協働が醸成され、企業利益向上に繋がります。さらに、重要なことは、経営理念やミッションをコア人材が100%自ら理解し、自身の言葉で、正しく伝えることができないといけません。特に、中小企業は、組織も小さく、人員数も限られます。その中で、尊敬され模範となる上司、先輩がリーダーシップを発揮することによって、組織内の人間関係や信頼関係が醸成し、提供するサービス、商品などの品質が高まりました。

その結果、勤務する企業つまり、理念やミッションそしてブランドに、誇りを持てることは、従業員の自立心、主体性を育成します。もちろん、その優良な組織を基盤に、経営者と経営陣が、より競争力のある企業に育成する姿を有言実行で戦略を策定し実行することが大前提であるのは言うまでもないことである。

ブランド基盤

次に、マーケティング面では、顧問先企業は、そもそも潜在的に高いブランド力がある企業でした。また、そのブランドに対するロイヤリティーも低くなかったのです。そこで、紙媒体を中心とした従来費用化していた販促や広告資金を、顧客と長く結びつく投資対効果・費用対効果の高い「自社メディア」、信頼や評判を得る「ソーシャルメディア」と消費者へ効果的にアプローチする成功報酬型ネット広告の連携した戦略実行とインフラに資金を配分し直しました。

同時に、お店という「サービス及びエンターテイメントを体感できる場所」での消費者へ向けた販売促進、PR、ブランディングは、店舗とモバイルインターネットを融合させ、ブランド発のコンテンツ企画開発及び制作運営による継続的なパソコン、ケータイ、スマートフォン、タブレットPC、への配信を開始しました。これらは、自社のブランドコミュニティーを形成し、顧客基盤として、中小企業の持続的競争優位と安定した収益基盤に唯一無二の資産となるからです。さらに、単なる広告宣伝費の削減に留まらず、自社で顧客基盤を会員化し管理することで、マーケティングの費用対効果向上はさることながら、通販ビジネス、海外から日本への観光つまりインバウンドのツールとして新規事業の基盤となるものです。このブランド基盤は、個々の顧客の関心領域において圧倒的な価値的優位を確立しているものであり、またその顧客の期待を常に裏切らないことを約束する製品や企業の象徴のことを指す。一方、企業にとってブランドは競争優位や長期的な収益の基礎になる重要な資産である認識を全社員に徹底し、その顧客基盤を基に、さらに、付加価値の高いサービスを創造することに意識を変革させました。その結果、ブランドが競争優位と継続的な収益の基盤と高い安定した収益を生み出す事業の仕組み全体を再構築し、前述のような丁寧な経営革新を日々、じっくりコツコツ実施し、経営者と従業員の皆さんと一緒に、増収増益体制に復活させました。

その結果、経営革新後、店舗をさらに増やし、インターネットと実店舗を融合させた新規事業も投資金額を最小限に抑えた投資効率を高めた事業開発にも着手しています。つまり、持続的競争優位と高い収益性がある事業の基盤が実現できた状態、ブランドがより強固になってきたと考えます。

上記の事例も、複雑で容易に解決できるものではありませんが、起業家である経営者が、経営理念、ビジョン、使命感などをもって具体化したものが、ブランドの基盤であり、それを継続的に高い収益性を維持する事業体制を構築するには、中小企業にとってなによりも、前述した、「財務」「マーケティング」と「人材育成投資」の三本の矢による絶え間ない改善と革新の連続性が創り上げるもので、短期的に出来上がるものではありません。同時に、中小企業の競争力は、「アートな独自性」「人間のクリエイティビティ」「職人技能」×プチ技術革新+ITの活用×現場力という融合体が競争力の源泉であり、ブランド基盤であると考えられます。

小生の顧問先企業の経営革新は、まだ道半ばです。しかし、この一年で、抜本的な革新の基盤は整備できました。今後は、さらに、改善し、規模という視点での成長ではなく、安定した高い収益性による成長を維持できる競争力とブランドをさらに強化していく所存です。

経営や経済のシナリオは「想定外」

最後に、これだけの経営革新に、辛抱強く、継続的に、運転資金、先行投資資金などで、ご支援いただいた金融機関には、この場を持って厚く御礼申し上げたい。現在、サブプライムローンによる経済低迷が終焉したかと思った矢先に、東日本大震災によるさらなる経済の悪化という「想定外」に遭遇しました。このときは、顧問先企業は、危機管理や今後の対策への初動もより迅速に行えるようになり、以前よりも変化適応能力が付いてきました。これからの日本は、「想定外」の変化が連続的に起きると経営者は考え、その変化適応能力と世界で生き残るブランド力、持続的競争力を絶え間ない努力で改善することは、経営としてやるべき仕事の必須条件となると確信しております。

サービス業と言えば、日本生活文化産業の代表的な業態であり、日本からオリジナルの文化様式を伴うブランドを体感し易いものでもある。つまり、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス、娯楽業、専門サービスは、文化クリエイティブ産業と農業、製造業(食料品製造業、繊維工業、家具・装備品製造業)と融合し、今では、農工商連携という名で行政が推進しているものである。

従って、サービス業とは、農業、製造業、商業(流通小売及びネット販売)つまり、日本における多くの生活文化産業を巻き込むバリューチェーン(付加価値創造連鎖構造)であり、従来の基幹産業と同じくらい雇用と成長をもたらす事業である。これらの産業は、本コラムのテーマである海外進出やインバウンド(訪日観光事業)の主たる受け皿でもある重要な産業の位置付けになるべきである。世界では、衣料や食品、飲食サービスのグローバル企業が少なくない。日本からも、日本生活文化産業からグローバル企業がでない理由は全く無いはずである。

しかし、日本国内市場で活躍している中小企業は、「自由貿易のさらなる推進」、「日本政府の財政基盤脆弱化による産業政策投資や公共事業の縮小と増税」、「資金供給体制の硬直化」「グローバル企業の低価格を武器にした日本市場への参入による競争の激化」、「少子高齢化による国内市場の縮小」さらに、今回の東日本大震災への復興財源確保による消費税増税に舵を切れば、個人消費のさらなる悪化となる。同時に、電力供給不足、レベル7の原発事故による、インバウンド産業(訪日観光事業)の壊滅的崩壊、放射能汚染による世界25カ国ほどの食品を中心とした日本からの輸入停止措置実施。

つまり、日本の中小企業は、「生きるか死ぬか」という、「チャンスとピンチ」の狭間にある。すなわち、自由貿易の推進によるアジアという既存事業の市場拡大と成長余地の拡大というチャンスと、もし、日本政府によるある種の鎖国的産業政策や増税が取られれば、恒常的な大不況下の縮小する国内市場でのジリ貧の経済規模の縮小悪循環の中で中小企業は、廃業や縮小を強いられるピンチである。

小生は、中小企業に世界の競争力を向上させるチャンスが与えられるべきと強く考える。なぜならば、日本は既に、自由貿易推進の枠組みなしでは成立しない。安全保障上の問題課題は、別途、熟慮した政策を実施すればよいが、今後の日本の雇用確保や成長を考えた場合、多くの中小企業には、リスクマネーの供給強化と多くのチャンスを提供する政策の推進が望ましい。

同時に、ほぼ全ての中小企業に言えることは、「ビジネスの効率化」の強化による「競争力向上」と世界へ通用する「ブランドビジネス」の構築への「経営革新」が、生き残りに直結し、今後やってくるチャンスを活かし、成長と高い収益性を享受する最低必要条件である。

戦略を実行する構成要素を、地味ではありますが、しっかり、じっくり、コツコツ、財務体質とバランスを取りながら、具体化し、継続することが、戦略そのものです。また、戦略の継続、改善を繰り返すことが、持続的競争優位になり、安定した収益性を確保し、世界への競争力を持つことになります。

東日本大震災で、経営や経済のシナリオは「想定外」に狂っていまいましたが、全力を上げての復興と原発問題の終息後は、さらに、高度化した世界での競争が待っています。日本生活文化産業の輸出、海外進出の絶好のタイミングが訪れるまでに、競争力あるブランド創出への戦略実行への努力を惜しまず続けることが今、最も重要な時期であると考えます。小生は、どんな「想定外」が起きようが、本質的にあるべき戦略による中小企業の競争力強化とブランド力強化をハンズオン経営支援を通して、顧問先の経営陣と従業員と一緒に日々、努力、邁進するだけである。

 
 

株式会社glow
代表取締役
植木 宏 / Hiroshi Ueki

1971年生まれ
慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 修士課程(MBA)卒業
2009年、株式会社glow 設立 代表取締役就任
大学卒業後、総合商社にて農産物・食品の輸出入事業に従事後、大学院復学し、MBA取得後は、多様な業態へのモバイルインターネットによるネット事業開発やネットベンチャーの経営に従事。

  • 財団法人沖縄県産業振興公社「平成17年度沖縄産学官共同研究推進事業」事業化推進リーダー
  • 2005年度金融特区新ビジネス創出支援事業・電子マネー研究会 研究員
  • 国立大学法人 琉球大学工学部 情報工学科 産業社会学原論II担当 非常勤講師

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