「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」

第8回

未曾有の大変革への日本生活文化産業中小企業の戦略実行の課題と実現方法②

 

はじめに

第8回コラムのテーマは、中小企業の最大の経営課題である、「人材確保」「マーケティング販路拡大」そして「ブランド創出」をテーマに引き続き戦略実行を整理したいと思います。第7回で、「未曾有の大変革」が、中小企業のどのような影響があるかを整理しました。今回のコラムでは、その背景下、「マーケティング」「人材」「ブランド」の戦略実行の課題と実現方法を整理したい。

前述したように、中小企業は、「自由貿易のさらなる推進」、「日本政府の財政基盤脆弱化による産業政策投資や公共事業の縮小」、「資金供給体制の硬直化」つまり、簡単に言えば、更なる過当競争となります。なぜならば、ファッション業界を例にすれば、グローバル企業のファストファッションの日本市場への参入による競争の激化、中小企業の競争力育成支援や産業保護が徐々に縮小し、さらには、公共需要の縮小、少子高齢化による国内市場の縮小、もし、消費税増税に舵を切れば、個人消費のさらなる悪化となる。このような、環境は、デフレを加速させ、強靭な体力のあるグローバル企業が、マネのできない低価格で、多くの個人消費需要をもぎとっていくこととなろう。同時に、デフレ経済のさらなる加速は、コスト削減の目的から、オペレーションの機械化による人員削減をも加速させる。

その結果、「新規顧客」を獲得することは至難の業である。マーケティング業務においても、既存顧客の維持費用と新規顧客の獲得費用では、前者と比較した場合、3倍はかかると言われております。さらに、上記のような環境変化は、新規顧客獲得コストをさらに引き上げ、資金力勝負となることは必然である。

その上、日本国内経済の先行きが不透明かつ成長が見えない中では、中小企業に対する資金供給体制はさらに硬直化すると予測される。しかし、これは、金融機関にとっては、自ら不良債権を育成しているようなものでもあります。このような背景下、中小企業にとって重要な課題は、環境に適応する経営革新と業績向上である。その実現には、戦略実行力のある経営陣と「マーケティング」「人材」「ブランド」である。

「売る」と「マーケティング」

○売ることだけに専念し、過当競争を自ら引き起こし悪循環体質
●マーケティング体制への投資と改善によるブランドロイヤリティ強化

販売で収益を上げるには、安く仕入れ若しくは、安く生産し、高く販売することである。ここで、重要なポイントは、コストを抑えるために、一定の規模の経済が働く仕組みを作ることが最低必要条件である。規模の経済を追求できない場合は、職人のように、手造りによる付加価値を追求することによって、収益性を確保しなくてはならない。つまり、中途半端な規模の経営は、非常に危険であると言えます。

次に、「高く」売ること、言い換えると高い収益性を確保する価格での販売ですが、一番高く売る方法は、SPA(製造小売)もしくはインターネットによる直販です。卸売と比較し、その収益性は格段の差があります。よくご相談のある議論として、既にプロダクトは生産してしまって、売らなければならない!というご相談です。本質的には、直販体制をじっくりと準備をして、販売、マーケティングをしていただきたいのですが、在庫を処分したい気持ちが先にたち、安売り量販店へ卸売してしまうケースが多いのが現実です。継続取引が成功しても、量販店からの値下げ圧力は増すばかりです。同時に、大規模な集客力のあるインターネット上のショッピングモールや販促ポータルサイトにおいても、商品検索エンジンの特性から、類似商品を、「安い順から表示」するのが通例です。例え、量的販売は実現しても、薄利多売、チャリンコ操業体質に陥ってしまうのです。

インターネットショッピングモールやポータルサイトも量販店も、自社の商品サービスの認知やブランド力を向上させるためには、その中で、販促協力金や広告費などの追加での費用を余儀なくされます。さらには、バイヤーに対し、多数の業者が、さらなる値引き売込を毎日のようにしてきます。その結果、過当競争を自ら引き起こし悪循環体質から脱出できなくなります。

では、どのような販売、マーケティングがベストかというと、ブランドを体感できるフラッグショップ(自社店舗もしくは、自社商品をブランディングしてくれる店舗)と自社インターネットによるSPA体制が、一番収益性が高いです。同時に、インターネットで販売することは、顧客基盤となる顧客データーベースつまり顧客リストを自社で持つことができるので、「誰にいくらで売っているかわからない」卸売と比較して、お客様が明確に把握でき、その満足度も数値化して把握できます。つまり、今後の中小企業にとって、従来費用化していた販促や広告資金を、顧客と長く結びつく投資対効果・費用対効果の高い「自社メディア」、信頼や評判を得る「ソーシャルメディア」と消費者へ効果的にアプローチする成功報酬型ネット広告の連携した戦略実行とインフラに資金を配分すべきと考えます。

日本において中小企業は、最新のデジタルマーケティングに対する専門知識や人材の不足、投資予算の限界などから、大企業や費用対効果の高いネット運用と人材が充実している欧米と比較し、割高な広告宣伝費を必要とし、デジタルマーケティング弱者となっているのが現状です。その格差と大きな情報非対称で、劣悪な費用対効果のマーケティングから収益力を低下させています。つまり、中小企業にとって限られた予算と人材で、目まぐるしく変化するデジタルマーケティングへの費用対効果や収益性に貢献する業務改善の実行は急務です。同時に、消費者へ向けた販売促進、PR、ブランディングは、ブランド発のコンテンツ企画開発及び制作運営による継続的なパソコン、モバイル、そして、AppleTVを初めとし、テレビは急速にデジタル化をきっかけに、ネット情報を映し出す装置へ変貌しているTV、これら3つのメディアへの配信が重要です。これらは、自社のブランドコミュニティーを形成し、顧客基盤として、中小企業の持続的競争優位と安定した収益基盤に唯一無二の資産となるからです。さらに、単なる広告宣伝費の削減に留まらず、自社で顧客基盤を会員化し管理することで、マーケティングの費用対効果向上はさることながら、通販ビジネス、海外から日本への観光つまりインバウンドのツールとして新規事業の基盤となるものです。日本国内の経済環境や消費環境が激変する中においては、これらのマーケティング業務の改善と戦略実行は急務です。

人材コストと品質と組織力

○人材はとにかく安く使い倒す
●人材育成へ投資

ご相談を受ける経営者の方々からは、とにかく、人材不足、必要な専門技能を持った人材の確保が困難であるとの相談が多いのは事実です。弊社は、そういったご要望からも、ハンズオン支援を徹底しています。経営陣としては、CFO、CTO、CSOや経営企画室の業務を担い、時には、人事部長や営業部長、IT事業部長として、中堅社員や新卒社員、若手社員の研修やOJTを実施します。

しかし、前述したような、収益性の高いマーケティングの仕組みを創らないで、専門技能を持たない労働集約型での非効率な販売や営業、組織運営を実行するためか、業績悪化や景気変動によって、安易に人件費削減で、収益をひねり出す打ち出の小槌としている企業が多く見られます。また、新卒の内定率の低さ、若年層の失業率の高さ、そして、フリーターというキャリア意識の低い人材が、激しく企業を出入りしているのも良く見られる光景です。

確かに、人件費は、一般管理費の中で占める割合は小さくありません。しかし、事業を戦略通りに実行、推進するのも人材です。結論としては、学歴はさておき、専門技能を持ち、企業理念に共感共鳴し、仕事をしてくれる人材をまず、何よりも優先して採用すべきです。同時に、正社員として雇用する人材は、「コア人材」となる人材に特化し、組織としては、小さく、業務効率の良い組織にすべきです。少なくとも、経営陣、デジタルマーケティング、商品製品サービス開発への人材には、お金を掛けるべきです。

なぜならば、主要産業の総コストに占める人件費は、平均で、6.4%です。サービス業であっても8.7%(出所:各社有価証券報告書よりATカーニー試算)でしかないのです。安易に人件費を削減するよりは、原価管理、販促宣伝費、物流費、IT関連費、施設管理費などの費用の合計の方が、数倍のコストがかかっていることをご存知でしょうか!?特に、前述したように、マーケティング体制のコスト削減と効率化、つまり、販促宣伝費、IT関連費は、もっと削減できます。弊社でもいくつかコスト削減支援を実施しています。

また、事務所経費などもより一層見直すべきです。

上記でも不足した経営機能は、アウトソーシングで良質で低コストのサービスを選択し、コア人材が管理すれば良いと思います。

つまり、その中小企業に合った、経営陣と経営理念に共感し、モチベーションのコア人材を獲得できれば、収益性の改善は、難しいものではありません。むしろ、専門技能のない、意識の低い正社員が、どんなに給与が安くても何人いても収益力は改善しません。なぜならば、経営者と同じ意識ではありませんから、コスト意識や業務の効率化や改善、リスクテイクした企業の成長への貢献には、全く興味がありません。このような労働集約型の中小企業組織を構築してしまうと、どうしても人件費負担が重いということになります。

同時に、上記のコア人材は、アルバイトやアウトソース企業の担当者、契約社員、派遣社員を管理していく立場でもあります。ここで、最も注意すべきことは、コア人材への投資です。具体的には、研修やOJT、権限委譲によるキャリアの育成です。さらに、重要なことは管理職としての人材育成、能力開発です。コア人材は、非コア人材一人一人に、リーダーシップを熟成させ、主体的に、かつ積極的に仕事に対するこだわりを持たせる責任があります。分かりやすい事例で言えば、ディズニーランドです。ディズニーランドで働く人のほとんどはアルバイトです。しかし、顧客満足度は非常に高いレベルを継続し続けています。

コア人材の管理職として最も重要な役割が、上司・先輩としての日常的な指導・サポートです。具体的には、リーダーシップがある、お客様や後輩に配慮し話しかける、困っていたら手助けする、改善点を見つけたらすぐに改善することである。同時に、親切、丁寧に指導することである。つまり、後輩や部下、取引業者、アウトソーシング担当への対応は、組織内外に反映されます。人は、「自分が扱われたように人を扱います」

つまり、人材育成プログラムをコア人材が中心となり推進することが重要です。その結果、スキルが効率よく身につき、働き甲斐ややる気、さらには、仲間との協働が醸成され、企業利益向上に繋がります。さらに、重要なことは、経営理念やミッションをコア人材が100%自ら理解し、自身の言葉で、正しく伝えることができないといけません。特に、中小企業は、組織も小さく、人員数も限られます。その中で、尊敬され模範となる上司、先輩がリーダーシップを発揮することによって、組織内の人間関係や信頼関係が醸成し、提供するサービス、商品などの品質が高まります。課題は如何に、コア人材を中心に、組織内外に価値観を共有し、好循環な良好な人間関係を構築するかである。

その結果、勤務する企業つまり、理念やミッションそしてブランドに、誇りを持てることは、従業員の自立心、主体性を育成します。もちろん、その優良な組織を基盤に、経営者と経営陣が、より競争力のある企業に育成する姿を有言実行で戦略を策定し実行することが大前提であるのは言うまでもないことである。

ブランドとは何か?

○ブランドのオリジナル性欠如と安易な模倣
●オリジナルブランド創出への努力と継続投資

さて、最後の経営課題、「ブランド」ですが、第1回のコラムで、ブランドの定義は、「ブランドとは、個々の顧客の関心領域において圧倒的な価値的優位を確立しているものであり、またその顧客の期待を常に裏切らないことを約束する製品や企業の象徴のことを指す。一方、企業にとってブランドは競争優位や長期的な収益の基礎になる重要な資産である。」と定義しました。さらに、一番重要なことは、ブランドが競争優位と継続的な収益の基盤と高い安定した収益を生み出す事業の仕組み全体の事と定義させていただきました。

この仕組みは、消費者にとってのブランドの役割として、①顧客にとって購買の意思決定に至るまでの時間やコストを節減する「識別」の機能②購買リスクの低減・回避に役立つ「品質保証」の機能③ブランドイメージに自己を重ね合わせ、自己実現や表現の手段とする「意味づけ」の機能を意味する。同時に、企業にとってのブランドの役割は、①ブランドの商標権を設定することで競合と差異化できる②顧客のロイヤルティを得て、安定的な売り上げを確保できる③プロモーションへの依存を減らすと同時に、競合製品に比べてプレミアム(上乗せ)価格を設定できるため、利益率が高まるなどの便益がある。ということである。つまり、持続的競争優位と高い収益性がある事業の実現できた状態を、ブランドと言えると考えます。

上記の課題は、複雑で容易に解決できるものではありませんが、起業家である経営者が、経営理念、ビジョン、使命感などをもって具体化したものが、ブランドの基盤であり、それを継続的に高い収益性を維持する事業体制を構築するには、中小企業にとってなによりも、前述した、「マーケティング」と「人材育成投資」の両輪による絶え間ない改善と革新の連続性が創り上げるもので、短期的に出来上がるものではありません。つまり、中小企業の競争力は、「アート」「人間のクリエイティビティ」「職人技能」×プチ技術革新+ITの活用×現場力という融合体が競争力の源泉であり、ブランド基盤であると考える。

結果として、第7回、第8回のコラムで執筆した戦略を実行する構成要素を、地味ではありますが、しっかり、じっくり、コツコツ、財務体質とバランスを取りながら、具体化し、継続することが、戦略そのものです。また、戦略の継続、改善を繰り返すことが、持続的競争優位になり、安定した収益性を確保し、世界への競争力を持つことになります。

東日本大震災で、経営や経済のシナリオは想定外に狂っていまいましたが、全力を上げての復興と原発問題の終息後は、さらに、高度化した世界での競争が待っています。日本生活文化産業の輸出、海外進出の絶好のタイミングが訪れるまでに、競争力あるブランド創出への戦略実行への努力を惜しまず続けることが今、最も重要な時期であると考えます。

 
 

株式会社glow
代表取締役
植木 宏 / Hiroshi Ueki

1971年生まれ
慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 修士課程(MBA)卒業
2009年、株式会社glow 設立 代表取締役就任
大学卒業後、総合商社にて農産物・食品の輸出入事業に従事後、大学院復学し、MBA取得後は、多様な業態へのモバイルインターネットによるネット事業開発やネットベンチャーの経営に従事。

  • 財団法人沖縄県産業振興公社「平成17年度沖縄産学官共同研究推進事業」事業化推進リーダー
  • 2005年度金融特区新ビジネス創出支援事業・電子マネー研究会 研究員
  • 国立大学法人 琉球大学工学部 情報工学科 産業社会学原論II担当 非常勤講師

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