「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」

第7回

未曾有の大変革への日本生活文化産業中小企業の戦略実行の課題と実現方法①

 

未曾有の大変革

前回第6回で、今、日本生活文化産業中小企業の取り巻く環境は、大きな産業構造の変化の上に、東日本大震災で、さらなる未曾有の大変革が加速度的に進行し、中小企業は、生き残りを実現しなくてはならない。具体的には、TPPなどの自由貿易促進の議論は一時、中断されているようであるが、構造的な未曾有の変化も同時に存在する。第1に、「保護産業例外ない平等な国際競争と自由貿易推進」第2に、「日本政府の財務基盤のさらなる脆弱化」第3に、「日本国内の成長性のある中小企業やベンチャーへの資金供給体制の硬直化」以下、具体的に、整理する。

第1の点は、日本は、TPPへの参加は、棚上、議論延期となっているが、既にFTAやEPAは、各国と締結し、日本の国益や経済成長に寄与する貿易体制は既に構築しており、特定分野の産業を保護しながらも世界的な自由貿易での経済的恩恵を得ている。TPPとは、それをも内包する大規模な自由貿易推進の枠組みである。つまり、いずれ近い将来、「人、モノ、金、情報」は、関税や各国の規制もなく、自由に行き交うことになる。農業など国家安全保障上の問題から、各国とも農業分野は、慎重な議論を要するが、ある種のルールの中での、平等な国際競争の枠組みを形成されるのは、時間の問題である。そのルール作りに一方的に不利にならないように、積極的に日本も関与すべきであると考える。その際に、以前のコラムでもお話したように、日本企業のビジネス効率性の悪さが大きな経営課題になるのは、必須である。それは、「人の生産性」、「モノ、製造開発の生産性」、「情報、ITインフラやインターネットを活用した業務効率やマーケティング効率の悪さ」が、国際競争力に対し、自身の競争力に致命傷を与える。特に、お金に関しては、前述のようなビジネス効率の悪い企業への融資や投資は、今まで以上に、より一層難しくなる。

第2の点は、上記のように中小企業が、国際競争力が劣位である間接的な理由として、政府の規制や、公共事業に依存した脆弱な経営に甘んじていることにある。しかし、度重なる国債の発行、この度の東日本大震災への復旧、復興への財源確保による日本政府の財政基盤のさらなる脆弱化は不可避である。復興財源の中に、個人への課税する税金や消費税の増加を、その財源とする議論が活発であるが、日本のGDPの60%を占める個人消費を悪化させるのは疑いようのない影響と推測される。しかし、4月に発表されたOECDの対日経済審査報告書においても、日本政府の財政基盤脆弱化に対し、消費税を20%へ引き上げることが望ましいとの報告も見られる。同時に、新成長戦略による経済成長による財政改善も同時に進めるべきであるとも言及している。具体的に、日本生活文化産業において重要なことは、アジア経済連携、地域の活性化、金融部門の改革である。簡単に言えば、日本国内市場だけの限界を、アジア経済連携をすることによる経済全体の活性化を促し、成長性の高い企業には、リスクマネーも含めた資金供給の強化、規制緩和推進による経済成長を実施せよという提案である。中小企業にとっても、日本国内市場や経済の長期停滞や縮小によるジリ貧を考えたらば、増税による個人消費の激減より、しごく賢明な選択と考えられる。

もし、日本政府、日本人我々が自発的にこの難局を解決できなければ、他力本願な対応を強いられる。他力本願とは、隣国韓国の教訓を参考にしたい、韓国はアジア通貨危機において、IMFの支援を求めた。それは、まさに占領軍のように、韓国に入り込んだIMF関係者の指揮のもと、韓国は悲惨な状況に追い込まれた。IMFの総裁だったミシェル・カムドシュ氏は影の大統領とも呼ばれ、血も涙もない無慈悲な改革を進めていった。今も記憶が生々しいが、その結果、競争力のない財閥が次々と解体され消えてゆき、大手企業も数多く倒産をし、銀行までも3/4くらいが倒産をしたのである。さらに、業績の良い企業も不安定な社会状況から生き残るためにリストラに走り出した。道端には失業者があふれ出し、韓国国民は自国が経済主権を失うことの極めて惨憺たる経験を身をもって味わった。ソウル駅広場には、1970年代以降いなくなっていたホームレスが現れ始め、失業者になった家長は家にも帰れずにホームレス化してしまったのだ。法的に身分を保証してもらっている公務員組織も例外ではなかった。多くの公務員が自分の意思とは関係なく役所を後にせざるを得なかった。

従って、安易な増税による国家財政基盤の修復というよりも、OECDも提案しているように、日本生活文化産業によるアジア経済連携、そのアジアの中での地域活性化による新たな産業育成、経済成長の主人公として中小企業が経営革新、イノベーション、適切な戦略の実行を行うことが極めて重要である。

第3の点は、OECDの報告書にもあるように、金融部門の改革である。つまり、潜在的な成長性のある企業への資金供給体制の強化である。しかし、上場ITベンチャーによる新興市場での粉飾決算問題による信用の低下、新興市場の縮小、東京市場の世界的プレゼンスの低下によって、ベンチャーキャピタルの活動の低下、さらには、銀行融資に関しても、不良債権を抱え込みたくない姿勢からの貸し渋りや日本経済、ひいては、新成長戦略の見えない先行き不透明な経済環境に対し、中小企業への潜在的成長性への懐疑性による融資スタンスは悪化の一途である。

以上のような、未曾有の中小企業を取り巻く経営環境の激変は、「現状維持の経営」では、事業の縮小均衡もしくは、廃業のような経営の意思決定をせざるを得ないことも意味する。「現状維持」では、もう生き残ることはできない。

上記の環境変化を背景に、前回、中小企業の戦略と競争優位の実践を「典型的な中小企業の戦略状況」と「本質的な戦略のある中小企業」の比較を以下のように箇条書きで比較一覧としてまとめましたが、今回のコラムは、日本生活文化産業の生き残りと成長への、その戦略実行の課題と実現方法を、事例を交えながら展開していきたい。

中小企業の戦略比較

【典型的な中小企業の戦略状況】以下コラム中では、○で示します。

  1. ブームや流行による市場拡大に模倣したブランドと低価格による競争力構築
  2. 戦略の欠如
  3. 節税対策を主軸にした経理主義による刹那的な収益の浪費
  4. 売ることだけに専念し、過当競争を自ら引き起こし悪循環体質
  5. 人材はとにかく安く使い倒す
  6. ブランドのオリジナル性欠如と安易な模倣

【本質的な戦略のある中小企業】以下コラム中では、●で示します。

  1. 起業家である経営者の哲学理念と分析による付加価値の高い競争力の構築
  2. 分析と自社のステージにあった戦略の策定と実行できる経営陣と組織の構築
  3. 財務の発想による経営環境変化とブランド創出への投資
  4. マーケティング体制への投資と改善によるブランドロイヤリティ強化
  5. 人材育成へ投資
  6. オリジナルブランド創出への努力と継続投資

競争力の構築

日本生活文化産業中小企業は、基本的に、農業、宿泊業、飲食サービス業、製造業(食料品製造業、繊維工業、家具・装備品製造業)、生活関連サービス、娯楽業、専門サービス業(デザイン・著述・芸術家)や文化産業(=クリエイティブ産業:デザイン、アニメ、ファッション、映画など)であるため、昨今、持て囃されている環境技術や新エネルギー技術などのような、革新的な技術革新に大きく依存するものではない。同時に、昔々からあり、人口に比例して堅実な需要がある産業である。また、流行やブームが、いつの時代も形成され、一定のサイクルと温故知新の発想を持って繰り返されているとも言える。

つまり、小生は、弊社でも強調しているのであるが、中小企業の競争力は、「アート」「人間のクリエイティビティ」「職人技能」×プチ技術革新+ITの活用×現場力という融合体が競争力の源泉であり基盤であると考える。以下、比較を例に整理してみよう。

○ブームや流行による市場拡大に模倣したブランドと低価格による競争力構築
●起業家である経営者の哲学理念と分析による付加価値の高い競争力の構築

戦略実現への課題であるが、上記比較は、実は、表裏一体の関係である。●の起業家が、じっくり、コツコツ時間を掛け、創り上げた小さな市場が、ブームや流行の基盤となるからだ。「今の目線」か「半歩先の目線」もしくは、「リスクフリー」か「リスクテイク」の事業の創造であるか否かである。中小企業というと、日本政策金融公庫の創業資金をベースに起業されるか、もしくは、ご自身の貯蓄した資金や資産で起業されることに大きく区分されると思う。

これは、財務や投資の考えで言うと、リスクとリターンの関係そのものである。具体的にいうと、銀行融資で起業すると、無難で、理解が得やすい市場のある事業を選択し、リスクを少なくし起業する。逆に、自己資金でやる限りは、資金と心身が、許す限り、リスクは取れる。つまり、リスクを取らない事業は、リターンも少ないのである。さらに、リスクがないから、参入障壁もないので、競合は増えるばかりです。その上、資金力の限界から、「とにかく売上、代金回収」と皆が思うので、安売り合戦が始まるのである。

逆に、それを尻目に、「次に来るものは何か?」に対して、起業家、経営者の情熱と数値上の分析をしっかりやった上で、継続性のある付加価値はなんであるかをしっかり検討し、不景気や競合他社が、財務的に劣位のとき、消費動向が変化する前後などの「タイミング」を見極め事業化することが、競争力向上の基盤に大いに役に立つ。後は、冷静に、じっくり、コツコツ、競争力の改善をひたすら継続することであると考えます。

戦略の有無

○戦略の欠如
●分析と自社のステージにあった戦略の策定と実行できる経営陣と組織の構築

戦略とは、「長期に渡って競合他社より高い収益性を維持できるシナリオ」とお話しましたが、このシナリオは、事業計画と表裏一体です。起業される方や、事業計画や事業予算を、新会計年度の前には、策定さていると思います。「戦略の欠如」とは、事業計画上にある数字や売上、収益に、論理的にも、実行面においても、「根拠がない」ということでもあります。中小企業の競争力は、「アート」「人間のクリエイティビティ」「職人技能」×プチ技術革新+ITの活用×現場力と小生は申し上げましたが、具体的に言えば、そのアートやクリエイティビティが、「競合他社よりどれだけ高く継続的に売れる」のか?それは、マネができない技術や技能、才能、知的財産権が担保されているのか?さらには、これらの融合した付加価値の高い価値の連鎖を、ITの活用と現場力による「継続的な仕組み」になっているか?さらに、長期間経営する中で、経済環境、経営に関わる内外の環境、組織としてのこれら変化への適応能力、改善力を持ち、しっかりと数値化できるシナリオや仕組みが、現実的にあるか否かである。簡単に表現すれば、戦略策定→実行→検証→課題問題点抽出→改善→戦略策定の洗練度向上を有機的に、様々な経営管理機能と組織が、有機的に結合して、スピードを持って実現できる状態であるかである。

上記のような根拠がない中で、事業計画を策定しても、戦略を策定しても、全ては机上の空論である。つまり、戦略の欠如である。戦略とは、机上の空論ではなく現場も含め実現可能でなければなりません。想いや気持ちだけでは駄目です。

財務と経理

節税対策を主軸にした経理主義による刹那的な収益の浪費
財務の発想による経営環境変化とブランド創出への投資

このテーマでは、前述のOECDの提案する新産業育成と同義である。つまり、新たな事業投資を実施することである。しかし、ベンチャーキャピタルは、開店休業状態、銀行を初めとした金融機関の貸し渋り、経営者は、現状維持、もしくは、チャリンコ操業が精一杯というのが本音ではないでしょうか!?

しかし、この本質的問題は、新規事業や新産業を成功させる、つまり、競争に勝つ戦略が欠如し、戦略の実行能力に担保力がないことが問題である。さらに、具体的に言えば、最適な経営陣、組織力が在るか否かである。同時に、その戦略が、事業計画にしっかりと根拠のある数値化ができているか否かでもある。様々な関係機関の調査では、中小企業の経営課題のトップは、「人材確保」と「マーケティング・販路拡大」である。既に経営者は、戦略の実行に、経営資源が不足していることを十分に理解している。結果として、人材確保やマーケティングは、費用というよりは、性格として、「投資」に近いのが実態である。つまり、資金調達の上でも、融資でもよりリスクマネーに近い性格のものである。これは、経営者自らリスクを取り、財務の発想による経営環境変化とブランド創出への投資活動をじっくりコツコツ継続的に成功するまでやりきることでもある。従って、銀行融資における交渉では、運転資金や設備購入への資金調達ではなく、経営陣、組織力でリスク管理可能な新規事業への投資資金であると言える。

今までの日本は、創業時の銀行融資やIPO前のベンチャーキャピタルという両極端な資金調達方法しか存在しなかった。しかし、その成長の間を取り持つ、資金調達方法も最近、制度化された。ご紹介しよう。小生は、キャタリスト証券株式会社 金融商品取引業者 沖縄総合事務局長(金商)第5号の登録パートナーでもある。パートナーとは、リスクマネーを投資した企業への戦略実行に対するハンズオン支援を弊社が行い、証券会社と共に、企業の成長を実現する事業協力体制を意味するものである。その制度は、グリーンシートと言い、金融商品取引所(旧、証券取引所)へ上場していない企業の株式を売買するために、日本証券業協会が平成9年7月からスタートさせた制度です。ベンチャー企業等で資金需要のある未上場企業に資金調達の場を提供し、他方でエンジェルや投資家に対して適切な情報開示のもと、未上場企業の株式を売買する場を提供しています。平成17年4月1日に施行された旧証券取引法により、グリーンシート銘柄の取引は法令の適用を受けることとなりました。従来、証券会社の自主的な取組みに委ねられていた不公正取引(相場操縦やインサイダー取引など)に関する取り締まりは、平成17年4月1日以降、法令に基づきなされることとなりました。また、これに伴い、グリーンシート銘柄の発行会社の開示情報は、上場会社と同様にTDnet(適時開示情報閲覧サービス)を通じて配信されることになりました。一般投資家を対象として、事業内容説明会などを通じて、証券会社の取り扱いによる公募増資が行えます

企業のメリットとしては、各種メディアへの露出の増大や、PR方法の多様化によって、大きな広告効果があります。 取引所上場銘柄と同様に、証券コード協議会にて証券コードが決定、付与(将来上場しても不変)されます。 取引所上場銘柄と同様に、開示でのTDnet(適時開示情報閲覧サービス)の利用や、証券取引所記者クラブ(各新聞社等のメディアポスト-東証では約75社)への投函によるPRが行えます。各取扱証券会社にて気配が表示され、一部日刊紙、日本証券業協会や取扱証券会社でも日々公表されます。取引所上場企業と同様なレベルの開示による、対金融機関も含めた信用力の増大が図れます。又、適時開示の内容は日本証券業協会や取扱証券会社でも日々公表されます。株式公開企業として、従業員のモチベーションアップや、優秀な人材の採用が行いやすくなります。株主やステークホルダーの増加により、ガバナンス面や営業面での応援などが期待できます。経済産業省のエンジェル税制も利用可能です。各都道府県などとの連携の強化などにもつながり易くなります。グリーンシートに登録・維持することにより、上場準備が容易になります
公開(上場)前規制適用除外 登録に要する期間は短期間です(登録準備は最短で約4ヶ月程度)。 上記メリットに対して、当社の登録(公開)コストは"圧倒的"なローコストです。

もちろん、上記のような透明な制度によるリスクマネーが成長性のある中小企業やベンチャーに制度新設された意義は大きいです。しかし、いくら資金調達しても、何度も申し上げますが、その資金を元手に、新規事業開発投資をし、成長しなくてはなりません。その大きな基盤となることは、経営陣の充実と組織力、戦略策定、事業計画そして、なによりも戦略実行力です。

小生は、このイノベーションズアイで、キャタリスト証券様と出会い、資金供給とハンズオン経営支援の両輪を持って日本生活文化産業の輸出や海外進出を実現させる所存です。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。次回、第8回コラムのテーマは、中小企業の最大の経営課題である、「人材確保」「マーケティング販路拡大」そして「ブランド創出」をテーマに引き続き戦略実行を整理したいと思います。

 
 

株式会社glow
代表取締役
植木 宏 / Hiroshi Ueki

1971年生まれ
慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 修士課程(MBA)卒業
2009年、株式会社glow 設立 代表取締役就任
大学卒業後、総合商社にて農産物・食品の輸出入事業に従事後、大学院復学し、MBA取得後は、多様な業態へのモバイルインターネットによるネット事業開発やネットベンチャーの経営に従事。

  • 財団法人沖縄県産業振興公社「平成17年度沖縄産学官共同研究推進事業」事業化推進リーダー
  • 2005年度金融特区新ビジネス創出支援事業・電子マネー研究会 研究員
  • 国立大学法人 琉球大学工学部 情報工学科 産業社会学原論II担当 非常勤講師

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