「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」

第4回

中小企業も海外進出及び世界展開は可能な時代に

 

情報暗黒時代からの脱却

今回のコラムは、中小企業が、海外進出や世界展開が、より安く、よりリスクが少なく可能な時代になった背景とその方法をテーマにしたい。

小生が、商社に入社したころは、テレックスという機械で、世界中にある事務所、支店と情報のやり取りをする時代であった。テレックスを知らない、世代に、少し、詳細を説明しよう。テレックスとは、古典的デジタル通信方式である。始まりは、1931年11月21日に世界初のテレックス網サービスである AT&T の TWX (TeletypeWriter eXchange) が開始された。この後、イギリスでは1932年8月15日に、ドイツでは1933年10月16日に、それぞれテレックスサービスが開始された。

1950年代には、企業に広く普及し、物流や商取引、通信社のニュース配信、気象通報で多く使われた。軍用指揮通信などの特殊な用途では現役であるが、商用では、1980年代のコンピュータネットワークの構築や、ファクシミリの登場、1995年頃からのインターネットの普及で、多くの一般商用のテレックス通信は電子メールに移行された。

つまり、日本においては、1980年代まで、テレックスを持たない大企業以外は、世界は、情報において暗黒大陸であり、言語、文化、宗教、地政学的なリスクによって、膨大なカントリーリスクが、企業にはある時代であった。また、情報というのは、大変、高価で、そのインフラ維持は、かなりのコスト負担を必要とした。

このリスクと情報非対称を、解消し、日本企業の製品の海外輸出販売の尖兵として世界各国で、「ゆりかごからミサイル」まで、ありとあらゆる日本製品を売りまくる機能として、「総合」商社となった。その後、メーカー自身による海外進出などから、総合商社不要論、冬の時代がやってくることになる。

中小企業の海外進出時代

さて、このような歴史や過去から、なぜ!?中小企業が、海外進出及び世界展開が可能な時代になったのか整理、説明する。

結論から申し上げれば、前述のように、インターネットの普及により、情報の非対称は、少なくなり、メールやスカイプなどによる海外とのコミュニケーションコストが激減した。さらに、世界中には、アリババ.comに代表するような法人間取引をネット上で成立でき、進出したい国、地域の情報も、JETRO(日本貿易推進機構)の活用や各国の貿易機関とのやり取りもインターネットで容易となった。

同時に、カントリーリスクと言われる、宗教、言語習慣の違い、法務、労務、知的財産権などの法制度の違いは、事前に明確になり、しっかりと事業計画の準備ができる。さらに、行政によって、東アジアや新興国での展示会や国内での商談会など頻繁に実施されている。このような、情報、商談機会、コミュニケーションコストの低下による、中小企業の海外販路開拓は、格段に容易になってきている。

つまり、海外販路開拓の初動や計画策定、情報収集、簡単な市場分析などは、かなり低コストに出来るようになった。

海外進出の課題

しかし、弊社の顧問先やご相談いただく企業の経営課題の多くは、人材不足もしくは人材の確保が困難であることである。特に、実際の販路開拓、販売、代金回収、現地でのマーケティングなどなど、中長期的な海外事業を管理できる人材がいない。同時に、貿易実務や貿易に伴う品質管理、貿易取引などなど実際のモノの動きに関するプロがいないことであると言う。

言い換えると、言語も含めた上記の知識を短期で学習し習得できる能力がある人材がいない。もしくは、該当能力を持つ人材を中途で採用できるほど資金的に余裕がないというのが実態である。さらに、海外進出で、極めて重要なことは、現地ニーズと自社の製品とサービスをいかに、現地化するか、というマーケティングと製品開発及び生産との組織的な取り組みが重要である。しかし、チャンスがあっても組織が対応できないのが、恒常的な中小企業の組織力の現状であり、海外進出への大きな課題である。

過去に、農業生産法人の海外への販路開拓と輸出の事業開発のハンズオン経営支援をしていたが、結局、上記の点が、解決できず、日本国内市場で販売している製品や商品ではなく、その「原材料」のみを輸出し、現地での商品化、マーケティング、販路開拓などの海外事業は、現地企業へ全て権限委譲する以外に方法がなく、とても悔しい思いをした。なぜならば、海外のバイヤーからオファーがあった魅力的な商品だったにも関わらず、原材料しか販売できなかったということは、その企業が恒常的に、得られる収益の大半を、現地企業に渡すことになる。つまり、自社で海外事業開発、マーケティングができれば、海外でも、国内と同じ、ブランドを構築し、その付加価値を供給、マーケティングすることにより、原材料販売以上の利益を確保できる。このような、現地でのブランド構築に成功すれば、同じ環境や隣接市場への展開はより容易になり、継続的な輸出金額は拡大が見込める。原材料だけを輸出すると、ブランドの模倣や、間接的に、日本産の産地偽装に加担することになったり、めぐりめぐって天塩に掛けて開発した製品、商品、サービスは、ブランドとして認知されず、むしろ、低品質な日本製として流通し、ブランド構築はより一層困難になり、大きなビジネスチャンスを失う。アジアによるブランドの模倣などの知的財産権の侵害は、日本企業の海外事業の組織的体制の脆弱さをつかれていることでもある。

自覚の必要性

前回のコラムでも執筆したが、確かに、中小企業の現状は、財務面、組織面、マーケティング面、困難な課題は多い。しかし、冷静に、足元や自国の強みを見てみると他国にマネのできない資源がある。海外進出というのは、自社の強みと、多様な才能、クリエイティブクラスの積極的な登用による既存事業のイノベーション、つまり、経営革新とIMDが指摘する「ビジネスの効率性」の向上を、経営者自らリーダーシップをもって実行することと同じ定義である。つまり、中小企業は、大企業と同じく、国内外の競合他社との競争に既にさらされているのである。その自覚が必要であると強く小生は思う。

具体的には、今までの日本国内市場の固定概念を変え、自国のクリエイティビティに寛容性を持つと同時に、上級管理職の役割を担うハンズオン型の人材と海外からの留学生、海外の就労滞在者の積極的な採用と既存組織の融合による新規事業、新規サービスを開発すれば活路は見えると確信する。むしろ、中小企業だから、人材の多国籍化や機動性、柔軟性、寛容性を持てるのではないか。それを認識し、組織を差別化し、国際競争を意識して、経営革新と、文化力を持ってすれば従来の概念とは違う、収益性の確保と豊かな中小企業が構築できるのではないかと考える。小生の知っている限り、色々なアーリーステージのベンチャー経営や現在の経営顧問先を見ても、その組織は、決して日本人だけではない組織の方が、非常にユニークな組織力や組織内に緊張感や創造力を持つことを実感している。

前述のように、中小企業にとって、情報コミュニケーションコストの激減、国内外に通用する寛容性かつ多様性のある組織の構築による「ビジネスの効率性」を向上させることが、結果として、海外販路拡大や海外市場への進出にも効果をもたらすことを提言したい。

付加価値=ブランド力

次に、上記までは、どちらかと言うと、海外事業開発の経営上の実務や組織問題にフォーカスをしたが、この時代でさらに重要なことは、海外事業を開発する前に、日本でブランドをしっかり構築し、そのブランドのPRプロモーションをインターネット上で常に海外に対し、プレマーケティングしておくことである。弊社の中国のパートナーになるべく業務提携する現地企業とインターネットで、コミュニケーションをしていると、「日本製」は、人気だが、「日本製」は売れない、という矛盾した話をしたことがある。

つまり、中国は、あまりにも大きく、1つの省が、1つの国にあたるほど、市場環境が全く違う。さらに、その中で、所得によるセグメントが明確に細分化されている。具体的に言えば、富裕層には、日本製の食品は、非常に人気がある。しかし、服飾雑貨に関しては、欧米のブランドが席巻しており、日本国内で富裕層が、好む服飾雑貨は、ほとんど売れない。つまり、ブランド価値を感じていない。為替上も円と元の換金率による高額な金額で購買する富裕層はいない。つまり、なんでもかんでも日本製であれば売れるわけではないのである。よくよく考えれば、至極当たり前である。日本においても、47都道府県で、消費性向などマーケティング事情は違うのであるから、中国ではもっと違いはあって当然である。

逆に、親日及び知日派の多い、タイや台湾においては、むしろ中国と逆で、日本の服飾雑貨や東京で流行する文化様式などは、憧れの的だという。多少、大げさではあるが、東南アジアのNYやパリのような存在であるようだ。今後、LCCのさらなる発展や観光ビザの緩和で、その影響力や交流は、文化的に融合拡大再生産していくのだと思われる。

さて、東アジア、東南アジア、ひいては極東地区で、それぞれの国々で、これだけの差があるのはなぜだろうか。1つは、文化や民族的に、日本への親和性が高いか否か、2つ目は、シンガポール、オーストラリアのように、都市が欧米やアジアからなるクリエイティブクラスが、集積している都市では、日本製のビジネスチャンスは少なく無い。

このような、日本びいきの国々でも、「如何に日本国内で、ブランドとして、認知されているかという第3者の評価」が、それぞれの市場参入時に大きな付加価値=ブランド力を、その国の消費者に認めさせることができる。つまり、より高く販売でき、競合他社より、より良い収益確保が、容易になる。

これらの国々で、日本のブランドを認知する手段は、インターネットと日本への観光である。東南アジア諸国は、今でははるかにインターネット普及率が向上し、YouTub,Ustream,現地の日本文化紹介サイト、日本語の読める人であれば、ありとあらゆる情報が、インターネットから取り出せる。ありとあらゆる日本カルチャー、流行、JPOPなどの情報を獲得し楽しんでいる。弊社の顧問先のアルバイトの韓国人の女性に聞いたところ、日本人以上に、日本の旬なエリアやお店を知っている。「今は、原宿より、中目黒や代官山、下北沢、吉祥寺などがクールだという」彼女は、就学ビザと就労ビザを駆使して、日本で学び、日本で働き、日本のクールと言われる文化様式を学び、取得して、韓国に帰国して、「日本式カフェ」をご両親とオープンするそうだ。余談であるが、同じ年齢の日本人と比較したら、その夢への行動力は、なんとも清々しく素晴らしい。

インターネットによるコミュニケーション

一方、私自身、インターネットは、日本語と英語で随分とお世話になっています。ビジネスのやり取りは当然としても、大学院時代の同級生などとのコミュニケーションにフル活用である。最近の流行であるSNSに関しては、匿名性ではない、FaceBookとLinkedinだけはSNSとして唯一、利用している。これらのSNSは、匿名性でないので、ネット特有の犯罪や無責任な言動、出会い系や悪徳商法、ネットクレーマー、デマなどの不愉快な思いなしで、世界中の仲間とコミュニケーションが「信頼」をベースに、展開できる。そのコミュニケーションにおいては、商社マン時代と同じく、多種多様な価値観や考え方がコミュニケートされ、その議論の先に、地に足がついた建設的なムーブメントが起きる。(マーケティング業界では、口コミ、バズとよく言うらしいが)しかし、皆様には気を付けて欲しいことがある。日本のSNSは匿名性で、インターネット上の表現や情報発信も所在が不明で、メディアとしては、大変残念ながら、極めて低レベルで独自の進化発展をしているので、インターネット上でのマーケティング管理は重要である。

インターネット調査会社comScoreの調査では、2008年12月に、10億人を突破した。特筆すべきは、アジア太平洋地区が、40%のシェアを持っている。さらに、米IDC社は、2010年の世界スマートフォン出荷台数が前年比74.4%増加の3億260万台になったと発表した。単純な推測だが、先進国を中心に、インターネット接続の30%は、PCと併用しているとしても既にスマートフォンとなっている可能性が高い。ご存知のアップルのipadも破竹の勢いで成長し、従来のPCの出荷台数減少に甚大な影響を与えている。世界は、一気にモバイルインターネット基盤が加速度的に整備されるだろう。

同時に、スマートフォンは、SIMカードや通信事業者の設定を国々で設定変更するだけで、同じ端末で、世界どこでもインターネットを利用できる。(日本の製品は、規制があり全世界とはいかないが)

従って、中小企業、日本から、自社のブランド情報の発信や国内メディアや消費者の評価などの第3者の評価の情報を発信することは、非常に重要である。なぜならば、ブランド認知に留まらず、世界中の共感してくれた人々から、製品開発のヒントやニーズ、継続的なコミュニケーションによるブランド価値形成など海外の市場参入までに、大きなコストを掛けず、プレマーケティングができるからである。引いては日本へ観光に来た際に、自社ブランドへの価値に共感共鳴し、認知していただいていれば、圧倒的な指名購買へと繋がる。弊社もgoogle上で海外向けに極めて小さな予算1万円だけで、各国の言語対応で試験的にクリック成果保証型広告をしたが、欧米アジアからのアクセスが想像以上に多かった。その結果、カルフォルニアや中国との企業と業務連携のコミュニケーションをしている。日本の中小企業へ海外進出へのより良いサービスを構築中である。既に発表させていただいているサービスと共にご期待いただけたら幸いです。

国内外での費用対効果向上のためのマーケティング

最後に、今回のコラムの整理とポイントをまとめてみたい。海外との情報格差は、インターネット誕生から10余年で大きく縮小し、いつでもどこでも必要な情報は、激安のコストで入手でき、世界への情報発信も過去のメディア体制と比較した場合、著しく安くなった。その道具を活用するためのデジタルマーケティングのマネジメントは、スマートフォンの急速な普及、成功報酬型広告の普及、ソーシャルメディアの普及からマスメディアや大手ポータルサイトへの広告出稿によるマーケティング活動が完全に終焉し、中小企業にとって極めて重要な業務へと激変しています。理由は、世界と日本において、主たる消費者層が、インターネットとモバイルへのメディア接触時間が劇的に増加しているためです。

その環境変化は、中小企業にとって、国内市場向けに、ただ他人任せの広告宣伝費を無駄に使用する現状から、さらに自社で費用対効果をたかめる戦略の策定と、より複雑になった環境に対応する最適な人材と組織の設置が急務であることを意味します。具体的には、今後の中小企業にとって、従来費用化していた資金を、国内外の顧客と長く結びつく投資対効果・費用対効果の高い「自社メディア」、信頼や評判を得る「ソーシャルメディア」と国内外の消費者へ効果的にアプローチする成功報酬型ネット広告の連携した戦略実行とインフラに資金を配分すべきである。中小企業の収益性や国内外へのマーケティング費用対効果向上に大きく寄与するからである。

人材育成とPRの重要性

同時に、以下の業務を担当する人材の育成が必要となる。具体的には、ブランドビジネス・ブランディングを目的とする中小企業にとって、良質かつ低コストのシステムインフラの設計選定とネット技術知識、製品開発、マス広告、ウェブ広告、ソーシャルメディア、店頭販促企画、成功報酬型広告などのトータルなマーケティング領域に関する一定以上の知識と経験による人材の育成である。

同時に、国内外の消費者へ向けた販売促進、PR、ブランディングは、ブランド発のコンテンツ企画開発及び制作運営による継続的なパソコン、モバイル、そして、AppleTVを初めとし、テレビは急速にデジタル化をきっかけに、ネット情報を映し出す装置へ変貌しているTV、これら3つのメディアへの配信が重要です。これらは、自社のブランドコミュニティーを形成し、顧客基盤として、中小企業の持続的競争優位と安定した収益基盤に唯一無二の資産となるからです。さらに、単なる広告宣伝費の削減に留まらず、自社で顧客基盤を会員化し管理することで、マーケティングとPR(広報)の費用対効果向上はさることながら、通販ビジネス、海外への販路拡大、海外から日本への観光つまりインバウンドのツールとして新規事業の基盤となるものです。日本国内の経済環境や消費環境が激変する中においては、これらの改善と戦略見直しは急務であると同時に、その実行は、中小企業が、インターネットを活用して、世界と繋がり、国内市場にしばられない事業の展開や成長への入り口でもあるのです。

中小企業という小規模の組織でも、インターネットの活用、寛容性をもって多国籍、多様な才能の受入による組織の革新、世界に通用するブランドの再定義などを、経営者が強いリーダーシップと経営理念、ビジョンを持って行動すれば、海外進出や世界への展開という大きな事業を大企業でなくてもできる時代になったことを是非、ご理解いただければ幸いです。小生も、経営顧問先の経営者の方々と共に、「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」の実現に日々悪戦苦闘しております。イノベーションズアイで、元気な日本を創ることに貢献できればと思います。

 
 

株式会社glow
代表取締役
植木 宏 / Hiroshi Ueki

1971年生まれ
慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 修士課程(MBA)卒業
2009年、株式会社glow 設立 代表取締役就任
大学卒業後、総合商社にて農産物・食品の輸出入事業に従事後、大学院復学し、MBA取得後は、多様な業態へのモバイルインターネットによるネット事業開発やネットベンチャーの経営に従事。

  • 財団法人沖縄県産業振興公社「平成17年度沖縄産学官共同研究推進事業」事業化推進リーダー
  • 2005年度金融特区新ビジネス創出支援事業・電子マネー研究会 研究員
  • 国立大学法人 琉球大学工学部 情報工学科 産業社会学原論II担当 非常勤講師

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