「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」

第3回

日本の資源は、寛容性と多種多様な才能と技術による新しい文化様式

 

資源のない国がなぜ豊かな生活を

今回のコラムは、そもそも日本の資源とは何なのか!?つまり、国際的競争力とは何なのか!?を考えたい。日本は、そもそも、「もったいない」という言葉、美徳を持つ国である。すなわち、言い換えれば、資源の無い国である。

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構によると、世界第3位(先日、中国にGDPベースで抜かれたので修正)の経済大国である日本は、その活発な産業活動と豊かな生活を支えているのが、石油、天然ガス、銅、ニッケルなどの膨大なエネルギーや資源です。言いかえれば、日本は世界有数のエネルギーと資源の消費大国であるとのこと。

しかしながら、日本固有のエネルギーや資源は極めて脆弱で、その大部分を諸外国からの輸入に頼っているのが現状です。さらに、近年のアジア地域における飛躍的な経済成長を背景に、これらの資源やエネルギーの世界全体の需要量が急増するなど、日本が安定的な供給を確保するのは、ますます難しくなりつつあります。 しかも、石油、天然ガス、銅、ニッケルの海外依存度は、ほぼ100%である。

さらに、カロリーベースでの食料自給率は、米と野菜以外は、全て50%以下である。油脂類、小麦、畜産物(輸入飼料生産に依存しない)は、20%を切る状態である。

このような現実の日本が、なぜ、豊かな生活を享受できるのか!?それは、第2次世界大戦後の高度経済成長に見られた、工業製品に対する、加工貿易の隆盛から世界中から、外貨を稼ぎ、鉱物資源と食料を輸入購買できる外貨を稼ぎ続けてきたからである。

具体的には、1980年代初めには自動車産業の躍進を背景に加工貿易は隆盛を極めたが、プラザ合意後の円高により収益性が大幅に低下した。その後、国内の有力な製造業は北米や東南アジア、中国へ生産拠点を移していった。2002年以降、中国とアメリカの経済成長により再び加工貿易がクローズアップされている。中国の安価な人件費を背景にした工業化は、より高い原料費とより安い販売価格でも収益を確保できるため、生産量が急増し原材料価格の上昇と最終販売価格の低下圧力となっている。これにより代替可能ないくつかの製造業は利幅圧縮に見舞われている。しかし、技術力と生産性を背景にした自動車産業が依然として競争力を保っており、日本の基幹産業となっている。

つまり、このような日本の資源事情や産業構造は、人材による技術力と生産性に大きく依存していることが分かる。

加速する海外投資

さて、このような日本が実在し、今後も安定維持、向上していくのであれば、このコラムの意味はない。日本の過去を比較して、現在の日本の実態はどうなのか調べてみたい。

スイスの有力ビジネススクールのIMD(経営開発国際研究所)が発表した「2010年 世界競争力年鑑」で、日本の総合順位は58カ国・地域で27位、前年の17位から急低下した。中国、韓国、台湾などに抜かれ、02年以来8年ぶりの低位に沈んだ。金融・経済危機で打撃を受けたうえ、少子高齢化や財政の厳しさが評価を一段と悪化させた。

IMDは主要国・地域の「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「社会基盤」の4分野で、約300項目の統計や独自調査の結果を分析し順位を発表している。評価の基準は一部異なるが、日本は調査を始めた1989年から93年まで首位だった。

今年はシンガポールが初の首位。「ビジネスの効率性」や「経済状況」の評価が高く、前年の3位から2つ順位を上げた。94年から09年まで首位を維持してきた米国は、財政赤字の膨張などで「政府の効率性」の評価が下がり、3位に転落した。2位は前年と同じ香港。アジア勢は台湾が「ビジネスの効率性」が高く評価され23位から8位に躍進したほか、中国が20位から18位、韓国が27位から23位にそれぞれ順位を上げた。

日本は成長率の低下や対内直接投資の低迷などを映し「経済状況」が大幅に悪化。少子高齢化に伴う労働力人口の減少で「社会基盤」の評価も下がった。「政府の効率性」では財政赤字の膨張が足を引っ張った。各項目をみると、日本は法人税の高さに関して、全58カ国・地域で最悪の評価となった。外国人労働者や外国企業の受け入れ態勢も評価が低く、調査に関係したエコノミストは「このままでは国際企業は活動場所として日本を選ばなくなる」と警告する。

公的債務を一般的に健全とされる国内総生産(GDP)比の60%に圧縮するのに必要な期間を国別に算出したところ、日本は2084年までかかる見通しで最長となった。IMDは放漫財政を改めない国の筆頭に日本を挙げた。

IMDの年間を引用したのだが、日本の国内市場の現状は、極めて厳しい。今回のコラムにおいて、重要な指標は、成長率の低下と対内直接投資の減少による経済状況の悪化、少子高齢化に伴う労働力人口の減少つまり、有効需要の減少。さらには、財政赤字による公共事業の縮小である。これは、中小企業にとって大きく依存している国内市場が極めて脆弱で、中長期的に停滞、縮小にあるということである。つまり、現在の経営環境は、安易な、好景気、不景気の景気循環の議論ではないということである。

この結果、日本の大企業は、日本国内ではなく、日本国外への投資を加速させている。生産拠点の移転や海外事業のための現地法人などは、わかりやすい具体例である。さらに、海外から日本への直接投資は、残念ながら、前述の国内市場から減少傾向である。

日本の資源とは何か!?

このような事実から、改めて中小企業において、日本の資源とは何か!?を考えたい。今回のコラムにも題名としたが、その資源とは、寛容性と多種多様な才能と技術による新しい文化様式ではないだろうか。

中小企業の経営者の皆様、中小企業には、「高学歴で優秀な学生はこない」「観光資源といっても沖縄、北海道、京都、箱根などの温泉地くらいでは!?」そして、「日本の文化など、そもそもお金になるのか!?」「そもそも銀行も文化じゃお金を貸してくれない」と思っていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。小生から言わせれば、世界で流行している文化つまり、ファッション、食文化、音楽、などコンテンツを、模倣しても持続的競争優位は、何も安定的な収益を確保できないと考えます。

経済成長を生み出す「都市」

前回のコラムでは、観光資源や文化の件を、取り上げたので、今回は、「人材」にフォーカスしたいと思います。読者に前提条件として、今回は、都市環境を前提とした話になるので、大変恐縮でありますが、何卒、ご了承いただきたい。

結論から申し上げると、世界中から、才能が集まる多様性を寛容する開かれた都市と社会には、情報技術、バイオテクノロジー、エンタテイメント産業が勃興しやすいのである。つまり、ジョージ・メイソン大学教授、リチャード・フロリダが提唱する「クリエイティブクラス」、科学、エンジニアリング、建築、デザイン、芸術、音楽、法律、ビジネス、金融、ヘルスケアなどの才能ある人材と起業家は都市に在住し、ビジネスで融合し、産業が勃興すると提唱している。良い地域の事例が、シリコンバレーである。同時に、リチャード教授は、グローバルな経済競争力に関する総合的な指数として、グローバル・クリエイティビティ・インデックス(GCI)上で、3つのT、テクノロジー(技術)、タレント(才能)、トレランス(寛容性)を基準に競争力を測定している。つまり、クリエイティビティと競争力は密接に関係することを実証している。

つまり、世界的な才能を引き寄せたり、離しているのは、国や企業ではなく都市であるという考え方である。世界の都市、ロンドン、パリ、NY、東京、上海、香港、シリコンバレーなど、元気ある企業は、元気のある都市や地域から生まれていることは疑う余地がない。また、クリエイティブ産業(クリエイティブな仕事、建築家、美術専門家、エンジニア、科学者、芸術家、作家、上級管理職、プランナー、デザイナー、美容師、弁護士などである)の経済的規模は、1999年のアメリカ労働統計局のテーターから、労働力人口比で、30%、総所得に占める比率で、47%もある。しかも、クリエイティブ産業の仕事は、新しく、その職業すべてが高学歴や芸術的な才能を必要としているわけでもない。むしろ、職業に対するこれまでの固定観念を強固に変えないことが収益性を阻害し、企業の成長を妨げるのである。重要なことは、専門的思考、クリエイティビティや専門的な問題解決力や良質な人間関係を構築し、デザインやイノベーションで相手のモチベーションをアップする複雑なコミュニケーション力が重要である。

具体的には、起業家とクリエイティブな人々の協働で、新しいアイデア、新しい技術、新しいビジネスモデル、新しい文化様式を創造することが新たな資本となり産業の基礎となるのである。このような、経済成長を生み出す、クリエイティビティ人材は、寛容性が高く、開かれた都市に集積されやすい。その集積を梃子に、企業は、イノベーションや生産性を増加させることができる。これらは、ポスト工業化の都市経済の基盤となり、ファッション、デザイン、芸能、インターネット取引、輸出入、投資、専門小売、金融などの能力を企業は寛容に取り込むことにより成長する。

リチャード教授によれば、GCI(グローバル・クリエイティビティ・インデックス)
による総合的な国の競争力を測定すると、1位は、スウェーデン、なんと2位は、日本である。3位は、フィンランド、4位が、アメリカ、5位がスイス。(出典:complied by Irene Tinagli based on various sources)、これはある意味、日本の既存の制度が形骸化し、階級、社会の構造がある種、崩壊し、寛容性があるとも言える。

文化人類学者のマーガレット・ミード氏は、「多様な価値観に富む豊かな文化を生み出すためには、人間の持つ、ありとあらゆる潜在能力を認め、それぞれの才能がそれぞれにふさわしい居場所を見出せるような、より自由な社会をつくり上げていかねばならない。」と言っている。つまり、このような、才能や技術を受け入れる寛容性は、日本においては、都市、つまり、東京となるであろう。

なぜならば、残念ながら、日本独自の閉鎖性や人材の多様性を都市以外は、寛容性を持って受け入れるには、かなりの時間がかかる。

変革をもたらすクリエイティブ人材

日本、東京は、中小企業にとって、人材の宝庫である。小生自身、大企業と言われる分類に勤務していたことがあるが、前述のようなクリエイティブクラスは、「変態」「非常識」な人材と認識され、寛容されることはほとんど無い。大企業は、多様性を嫌うのである。大企業は、事業部制にしろ、規律ある組織によって官僚機構的に運営されるものであるがゆえに、多様で異質な才能に対しては、寛容性を発揮できない。

しかし、近年のインターネットサービスベンチャー企業などは、全く逆で、クリエイティブクラスが大量におり、プランナー、上級管理職、起業家である社長などとオリジナルの高い競争力を生み出している。そして、多くは中小企業である。小生も、大学院を卒業後、モバイルインターネットベンチャーに管理職として勤務したが、あまりの人材の多様性に、驚愕したものだ。

小生は、新卒採用顧問もやっているが、今年も大卒の内定率は、過去最悪を更新する。実態は、本当に、国際競争力と比較して能力不足もしくは、十分な能力を持つという点で採用の成否が決定されているが、採用企業の将来の競争力に大きく影響するため、後者が内定を得ている。一方、一風変わった風貌やコミュニケーションをする多様な多国籍な若手クリエイティブ人材も日本には増加しているように感じる。

そのような人材を理解、モチベーションを向上させて、管理できるのは、中小企業であり、起業家であると思う。むしろ、中小企業であるからこそ、多種多様な人材を登用する柔軟性があり、大企業とは違う多様な付加価値の高い文化的事業を起こせるのではないかと考える。弊社の顧問先も、社長自身もアーティスト肌で、従業員も、どちらかというと非常識な部類かもしれないが、アートと弊社のようなMBA的合理性や起業家精神によるハンズオン型経営支援が融合すると非常に、真似のできないユニークな事業へと変化する様を小生は、実感している。

日本は、冒頭に書いたように、工業化で成長を成し遂げた、中小企業も、その工業化の下請けを中心に成長を遂げた。しかし、未曾有の産業構造の変換は、中小企業自らも、もう一度、0からの起業と定義し、経営者自身、多様な才能や技術を持つ人材に寛容性をもって理解し、新しい文化様式を生み出し、生活文化産業での競争力向上と魅力向上に積極的に動くべきではないか。

ある意味、渋谷で、垣間見る、109や109-2に見るギャル文化、ギャル男文化のファッション文化様式は、新しい文化様式産業の一部ではないかと考える。ジャパニメーションやメイド喫茶、日本発の様々なサブカルチャー、音楽、そして、農業、食文化から創造される新たしい文化様式は、世界で十分な競争力を発揮し、収益を得ている。

他国にマネのできない資源

最後に、中小企業の現状は、財務面、組織面、マーケティング面、困難な課題は多い。しかし、冷静に、足元や自国の強みを見てみると他国にマネのできない資源があるのではないだろうか。弊社の顧問先もそうであるが、急激な変化は、中小企業の財務体質や取引金融機関の理解寛容度に合わない、しかし、自社の強みと、多様な才能、クリエイティブクラスの積極的な登用による既存事業のイノベーション、つまり、経営革新とIMDが指摘する「ビジネスの効率性」の向上を、経営者自らリーダーシップをもって実行することは急務ではないだろうか。

残された時間は多くない。しかし、固定概念を変え、自国のクリエイティビティに寛容性を持って新規事業、新規サービスを開発すれば活路は見えると核心する。むしろ、中小企業だから、機動性、柔軟性、寛容性を持てるのではないか。それを認識し、差別化し、国際競争を意識して、経営革新と、文化力を持ってすれば従来の概念とは違う、収益性の確保と豊かな中小企業が構築できるのではないかと考える。

皆さん、是非、歴史的視点や既存事業、経済、経営環境、そして、日本、東京のクリエイティブ産業と人材を、固定概念を取り払って冷静に、ユニークな自国文化の新しい文化様式ビジネスを起こし、ブランド化し、海外へ、世界へ、輸出しようではありませんか。

 
 

株式会社glow
代表取締役
植木 宏 / Hiroshi Ueki

1971年生まれ
慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 修士課程(MBA)卒業
2009年、株式会社glow 設立 代表取締役就任
大学卒業後、総合商社にて農産物・食品の輸出入事業に従事後、大学院復学し、MBA取得後は、多様な業態へのモバイルインターネットによるネット事業開発やネットベンチャーの経営に従事。

  • 財団法人沖縄県産業振興公社「平成17年度沖縄産学官共同研究推進事業」事業化推進リーダー
  • 2005年度金融特区新ビジネス創出支援事業・電子マネー研究会 研究員
  • 国立大学法人 琉球大学工学部 情報工学科 産業社会学原論II担当 非常勤講師

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