「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」

第1回

ピンチはチャンス!?中小企業を取り巻く経済、経営環境とは!?
攻撃は最大の防御、経営革新と競争戦略が重要なとき!

 

はじめに

今回のコラムを執筆する、株式会社glowの植木と申します。このコラムのテーマは、「日本生活文化産業のブランド輸出による新たな成長」であります。

第1回目は、コラムを展開する主要な定義を決め、共有し、このようなテーマによるコラムの執筆の理由と現在、その主人公となる中小企業の取り巻く経済、経営環境を整理共有したいと思います。

商社の黄金時代

まず初めに、小生は、「人類の進歩と調和」(Progress and Harmony for Mankind)というテーマで、1970年の77カ国、6,400万人が来場した日本万国博覧会の翌年、1971年に生まれました。その翌年1972年には、沖縄が日本に返還された。世に言う高度経済成長を支えた団塊の世代ジュニアとして人生が始まった。

人類の進歩という名のもとに目まぐるしく工業製品の技術革新がおき、生活は豊かで右肩上がりの成長を謳歌した時代であった。

しかし、1980年代から1990年代初頭までに起こったバブル経済で、大学生時代を過ごし、卒業は、「バブル崩壊」という過中1994年大学を卒業し、商社マンとなった。入社した当時、上司に、「植木君、日本は、資源もなく最も貧しい国の1つであることを知っているか?理解しているか?と質問を受け、ピンとこなかった。その後、上司は、最貧国日本だからこそ、商社は、工業製品に付加価値をつける加工貿易や世界への輸出販売によって日本経済を成長させなければならないのだよ」と上司に言われ大きな感銘を受けた記憶がある。商社の黄金時代であった。

輸入依存国

今、振り返ってみると、当時と比較した場合、世界経済の中の衰弱する日本経済と日本国内経済と産業構造は大きく変わり、石油、食料、希少鉱物資源、様々なエネルギーを大きく輸入に依存しなければならない成り立たない国であることを、商社入社以来改めて、日々感じざるを得ない時代へと激変していた。さらに、世界は、人類の調和どころか、東西冷戦の終焉とグローバル経済の進展に伴い、新興国の発展、先進国の経済の停滞によって、経済の主導権は、G7からG20と世界に分散し、世界的な地政学的な不安定さが増している。日本も少子高齢化、長期的な公共政策投資の減少、大企業の生産拠点の移転などによる雇用減少、国内市場の縮小、デフレ経済から経済は衰え、先日、中国に、GDPを抜き去られたばかりであり、今後、ASEAN諸国やインドの発展も含めると、その経済的地位は下がらざるを得ないと容易に理解できる。

ベンチャーの停滞

第2に、小生は、経営学修士(MBA)を取得する際、大学院の修士論文において、ベンチャーファイナンスと戦略をテーマに、成功した起業家と失敗した起業家のベンチャーとそのベンチャーに投資したVCや企業、金融機関との関係性の実情を丹念に調査し、時には当事者にインタビューを行い、ベンチャーファイナンスとベンチャー戦略の最適解とはなんなのかを専攻分野として研究した。大学院卒業後、世の中は、IT技術及びサービスによるベンチャー企業が多く生まれだし、日本の新興市場を大いに賑わしていた。小生も、数多くのネットベンチャーの立ち上げや事業開発、アーリーステージの経営に携わることになった。

しかし、現在は、日本の新興市場の凋落、起業家の壊滅、若者の保守化により日本の将来を担う新産業のエンジンである社内外のベンチャーの創造の停滞が著しい。その間、アメリカや中国を始めとした新興国からは、多くのベンチャー企業が生まれ、日本企業を凌駕し席巻する世界標準を担う、グローバル企業が世界を闊歩することとなった。なぜ、このような新産業が勃興、振興しない構造的な停滞が生まれたのだろうか。小生は、歴史に学ぶことが、客観性を確保するのにより良いと考える。

歴史に学ぶ

このような現実を目の当たりにするが、日本は有史以来、農業を中心とした産業の貧困国であった。江戸時代、工業化や帝国主義に関わる問題で、富国強兵、工業化をアジアでいち早く成し遂げ、唯一、帝国主義時代に欧米の植民地にならなかった国である。さらに、第1次世界大戦では戦勝国となり、著しく国の近代化、工業化を実現できた。

しかし、今の日本は、野中郁次郎氏の著書、「失敗の本質」に描かれている、「日本軍は環境に過度に適応し、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(かつて学んだ知識を捨てた上での学び直し)を通しての自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかった状況」に近似しているのではないかと思うこの頃である。今回のテーマに沿って、言い換えるのであれば、中小企業は、高度経済成長と過去の成功モデルにいまだに依存し、会社組織のなかでも長く閉鎖されると(外部の役員が入らなかったり、中途採用がなかったり)、帝国日本軍的な考え方に陥ってしまっているのではないだろうか。目的があいまいな企業や、心粋だけが評価されてしまうような組織は往々にしてある。閉鎖が長引けば長引くほど組織的な反省は取られず、最終的には倒産してしまう状況に企業経営は陥っているのではないかと考える。

日本を元気にする

第3に、今回のコラムの目的とテーマのそれぞれの定義を整理したい。日本を元気にするイノベーションネットワークの輪、イノベーションズアイの企業及び個人の会員の合計約3,000会員の皆様においても、小生と生きていた時代の違いはあったとしても、「日本を元気にする」というキーワードに共感共鳴しコミュニティーが形成されていると考えます。

弊社は、前述の通り、中小企業ベンチャーに特化したハンズオン型経営支援を実施し、顧問先企業の社長と共に二人三脚で、前述の経済、経営、歴史の背景を前提条件に、日々汗を流し、新たな中小企業の成長モデルを走りながら考え実践し革新させる孤軍奮闘中であります。

その結果、弊社の活動とコミュニティーの趣旨から、このコラムのベースとなる定義を整理し読者の皆さんと共有したいと思います。今回のコラムの「日本生活文化産業の定義」は、総務省統計局、日本標準産業分類(平成19年11月改定)における、農業、宿泊業、飲食サービス業、製造業(食料品製造業、繊維工業、家具・装備品製造業)、生活関連サービス、娯楽業、専門サービス業(デザイン・著述・芸術家)。そして、経済産業省による政策で、ものづくり・情報・サービス産業に分類され、ものづくり産業振興におけるクールジャパン戦略、日本の戦略産業分野である文化産業(=クリエイティブ産業:デザイン、アニメ、ファッション、映画など)の海外進出促進、国内外への発信や人材育成等の政府横断的施策の推進活動。に関わる産業における中小企業を対象とし海外進出やブランド輸出をゴールにコラム連載を進めていく。

ブランドの定義

さらに、常に論争が耐えないブランドの定義であるが、従来は、その定義として、「ブランドは、企業が自社の製品等を競争相手の製品等と識別化するためのネーム、 ロゴ、. マーク、シンボル、パッケージ・デザインなどの標章」として理解している方が多いのではないでしょうか。しかし、今回のコラム上では、ブランドの定義は、「ブランドとは、個々の顧客の関心領域において圧倒的な価値的優位を確立しているものであり、またその顧客の期待を常に裏切らないことを約束する製品や企業の象徴のことを指す。一方、企業にとってブランドは競争優位や長期的な収益の基礎になる重要な資産である。」と定義する。

一番重要なことは、ブランドが競争優位と継続的な収益の基盤と高い安定した収益を生み出す事業の仕組み全体の事と定義します。

この仕組みは、消費者にとってのブランドの役割として、①顧客にとって購買の意思決定に至るまでの時間やコストを節減する「識別」の機能②購買リスクの低減・回避に役立つ「品質保証」の機能③ブランドイメージに自己を重ね合わせ、自己実現や表現の手段とする「意味づけ」の機能を意味する。同時に、企業にとってのブランドの役割は、①ブランドの商標権を設定することで競合と差異化できる②顧客のロイヤルティを得て、安定的な売り上げを確保できる③プロモーションへの依存を減らすと同時に、競合製品に比べてプレミアム(上乗せ)価格を設定できるため、利益率が高まるなどの便益がある。ということである。つまり、持続的競争優位と高い収益性がある事業であると定義する。

従って、このコラムの目的は、イノベーションズアイに参画する約3,000の企業と個人会員を基盤に、既存の中小企業をイノベーションさせて、ブランド化し、イタリアやフランスを代表するような、文化産業の輸出による新たな成長を見出すことにある。これで、コラムの目的と様々な定義を理解共有できたかと思います。

中小企業を取り巻く環境

第4に、コラム第1回では、中小企業を取り巻く環境の整理もしておきたい。日本の中小企業の多くは、歴史的経緯と産業構造から大企業の下請けもしくは、国内市場内需に依存する産業が圧倒的に多い。それは、前述のように、日本経済の発展と表裏一体であることは理解に易しい。最近、現政権の「平成の開国」というTPPのテーマが注目されているが、実は、本質的には、第2次世界大戦前後に存在したブロック化経済と戦争の反省から、1947年から、自由貿易交渉は、各国で利害対立しながらも、常に発展してきているのである。むしろ、日本の自動車や工業製品、エレクトロニクス製品は、この自由貿易推進にのって世界で大きな成功を収め、経済成長を成し遂げた国でもある。

改めて、この日本を取り巻く自由貿易推進の歴史を振り返ってみよう。1947年GATT(関税及び貿易に関する一般協定)鉱工業品・農林水産品の関税引き下げ、サービス分野の規制緩和なし、幅広い分野での包括的交渉を23カ国参加から開始された。1964から67年には、62カ国が参加したケネディラウンドが、工業品関税の一律50%下げを原則採用した。その後、1986年から1994年にはウルグアイラウンドに123カ国が参加し、鉱工業品関税引き下げ、農業、サービス自由化、貿易ルール強化などの包括的内容を採用。

小生は、このウルグアイラウンドにて、日米農産物交渉合意後、牛肉やアメリカ産のりんご、オレンジ、野菜などの輸入自由化と国内の食料自給率低下を受け、青果物の開発輸入の事業開発に従事した。環太平洋地区、アメリカ、メキシコ、韓国、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドなど多くの国々に訪れ日本向けの青果物の開発輸入を行った。同時に、輸入だけではなく、国内農協や農業生産法人などと連携し、国内青果物の差別化強化やブランド化推進、なしなどの輸出にも携わった。

その際に、ドール、デルモンテ、チキータというフルーツメジャーと呼ばれる、果物、野菜、その加工食品の世界市場を圧倒的に寡占するグローバル企業の存在に圧倒された思い出がある。ある種、農産物の石油メジャーや世界の穀物を寡占するメジャー企業である穀物商社のカーギルなどと同じ存在である。現在、日本国内の大規模農業化や農業経営の近代化が叫ばれているが、世界には、主要食料を牛耳るメジャー企業があることを知り驚愕した。

前述のような歴史と背景から、TPPに発展する問題は、事実として、日本国内で食糧不足を理由に、1955年、日本がGATT加盟に踏み切ったことから始まっているのである。その後、自由貿易推進と農業保護の利害対立と世界での自由貿易推進による大企業の成長とのジレンマは、今も継続しているのである。つまり、食糧問題に関しては、1955年から魚介類、米、野菜以外は、既に圧倒的に自給率不足であったのが事実であった。その後、上記の産品に関しても農業という産業の合理化の遅れと円高による内外価格差解消という名目で、食糧輸入を拡大し、現在のような、安く安定した食料事情を実現してきた。

中小企業のイノベーション

第1回コラムの最後に、前述のように歴史的、自由貿易推進構造、世界との結びつき、産業構造の激変などから、中小企業の取り巻く環境は、国内外、極めて複雑な競争環境の中で勝ち残っていくしかないのがご理解いただけただろうか。このコラムの目的としても、「貿易問題や農業政策などへの議論より、起業家、経営者など動ける企業や個人から連携し、中小企業をイノベーションさせ、世界への競争力を向上させ、ブランド化し、輸出企業へと革新することである。つまり、イノベーションズアイの会員の共感共鳴する人から行動に移し実現していこう!」ということである。具体的には、大企業の下請けモデルから革新。デフレの国内市場での非効率で生産性の低い経営からより競争力のある経営への革新を行わなければならないのである。弊社の顧問先企業も、前述のような事実を認識し、全社を挙げて経営革新に取り組んでいる。既に一部の部品メーカーは系列取引の崩壊から、世界一位のメーカーに革新している中小企業も多く、アジアの経済発展から、飲食サービス業は、FCなどによる店舗展開に成功している企業も少なくない。

つまり、中小企業を取り巻く環境は、ピンチだけではない。以前は、大手企業や大規模な投資を可能とする企業しかできなかった小売流通販売やマーケティングが、インターネットの技術革新と世界的普及により、低コストで実現可能となったのである。中小企業にとっては、従来のコストと投資と比較したら、劇的にその金額は、安くなっているのである。

具体的には、デジタルコンテンツ(音楽・ゲーム・書籍)流通販売、ネット通販による世界的販路の拡大、同時に、従来の広告宣伝費用の効率化や数値化による費用対効果の劇的な飛躍によるマーケティングコストの低下。つまり、中小企業は、徹底した合理化による良質な製品・商品・農産物・食品・コンテンツというプロダクトを創出することに専念すればよいのである。後は、実店舗とインターネットインフラ活用によるネット事業とマーケティングで世界中に販売が可能となる。世界にはインターネット接続している人は数十億人に上る。言語問題とローカルな事業戦略対応をすれば、参入は容易である。同時に、高収益を上げる中小企業になるためには、世界で認められる、ニッチな市場で寡占独占できるような日本文化力によるブランド構築をするだけでいいのである。デフレの日本市場で多くの市場シェアを維持して、一桁の経常利益より、世界の小さいが深いニッチ市場で、ブランドビジネスを行ったほうがはるかに収益性を高くできる。

イノベーションズアイのコミュニティ上で、日本生活文化産業と今後、主たるモバイルインターネットによる世界市場とのアクセス確保し、一致団結して呉越同舟だとしても、世界規模での共栄共存を目的に、中小企業の革新と成長をブランドの輸出で達成しなくてはならない。新たな活動と成功企業の育成を一致団結して行おうではありまりませんか。

世界的に注目される日本文化

具体的に今後は、農業と食品製造業、専門サービス業の大連携とデジタルマーケティングによるブランド化と輸出、さらに、ブランド育成に必要な体験を提供するインバウンド産業(日本への観光)の振興、つまり、生活関連サービス、娯楽業、クールジャパン戦略、日本の戦略産業分野である文化産業(=クリエイティブ産業:デザイン、アニメ、ファッション、映画など)による、都市観光資源、地域観光資源の創出とブランド認知してもらう世界の人への日本文化体験をより一層強化することが重要である。中小企業の経営者の皆さん、ウチには、それだけの人材や組織力がない、銀行が融資してくれない、とあきらめないでください。小生は、ベンチャー企業の新卒採用顧問もしておりますが、中小企業であっても、経営者自らわくわくするビジョン、企業理念と戦略を、学生に伝えれば共感共鳴して経営者と共に汗をながして仕事をしてくれる若者も想像以上に多くいます。日本の金融機関においても、経営陣、事業計画、戦略の実行力と実績があれば、融資に応じてくれる金融機関もあります。弊社顧問先は、弊社のハンズオン経営支援を経営機能の補強として、適切な評価をしていただき融資に成功した事例もあります。

戦争において、「攻撃は最大の防御である」といいますが、世界的に、日本文化が注目される中、国内市場で、デフレ競争による消耗戦より、海外へ一致団結して輸出、進出する方へ経営資源を集中すべきではないでしょうか。もちろん、困難な沢山あります。困難を乗り越え、元気な日本を創り出すムーブメントの切っ掛けになればと小生の経験と弊社のハンズオン経営支援の取り組み事例を紹介しながら、コラムを連載していきます。

是非、皆様のご理解ご支援を得ながら、元気な日本を、着実に中小企業から創り上げていきましょう。

 
 

株式会社glow
代表取締役
植木 宏 / Hiroshi Ueki

1971年生まれ
慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 修士課程(MBA)卒業
2009年、株式会社glow 設立 代表取締役就任
大学卒業後、総合商社にて農産物・食品の輸出入事業に従事後、大学院復学し、MBA取得後は、多様な業態へのモバイルインターネットによるネット事業開発やネットベンチャーの経営に従事。

  • 財団法人沖縄県産業振興公社「平成17年度沖縄産学官共同研究推進事業」事業化推進リーダー
  • 2005年度金融特区新ビジネス創出支援事業・電子マネー研究会 研究員
  • 国立大学法人 琉球大学工学部 情報工学科 産業社会学原論II担当 非常勤講師

同じカテゴリのコラム

コラム検索
新聞社が教える SPECIAL CONTENTS
プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。