海外進出企業の国際税務入門

第4回

海外進出ー恒久的施設(PE)なければ課税なしのはずが?

山中 一郎 2017年10月13日
 
海外進出企業の皆様より、「現地子会社が日本の親会社の恒久的施設(PE)に認定されて、課税を受けた」、「営業を行っていない海外駐在員事務所が恒久的施設(PE)に認定され、更正処分を受けた」というお悩みをよくお聞きします。今回は恒久的施設(PE)について、ご説明しましょう。

恒久的施設(PE、Permanent Establishment)とは?

恒久的施設(以下、PE)とは、「支店や事務所、工場など、事業を行う一定の場所であって、企業がその事業の全部または一部を行っている場所」を指します(OECDモデル租税条約の定義)。

企業が海外でビジネスを行うにあたっては、「PEなければ課税なし」という国際課税(法人税)の大原則があります。これは、企業が進出先国で得た事業所得は、現地にPEがなければ、現地の税務当局によって課税されないという原則です。反対に、PEを有している場合には、現地国で課税され申告納税が必要となります。

つまり、恒久的施設があるか否かは、進出先国で税務当局の課税権が及ぶか否かを決定する重要なポイントです

恒久的施設(PE)の範囲は?

PEの範囲については、日本と進出先国が租税条約を締結している場合には、租税条約の規定を、締結していない場合には、進出先国の国内法を参照する必要があります。

日本が租税条約を締結する際にひな形としているOECDモデル租税条約では、PEの範囲として以下のものをあげています。

(1) 支店PE
事業の管理の場所、支店、事業所、工場等

(2) 建設PE
建設工事現場又は建設、もしくは据付工事で12カ月を超える期間存続するもの

(3) 代理人PE
企業に代わって行動するもの(仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人を除く)

ただし、「駐在員事務所」のように、企業が海外の市場調査や情報収集など、いわゆる準備的、または、補助的活動のみを目的として、海外に一定の場所を保有する場合は、PEに該当しないものとされます。

海外税務当局による恒久的施設(PE)認定のリスクとは?


海外進出企業が注意すべきは、進出先国によっては、税務調査において調査官がPEの定義を拡大解釈して、追徴課税を行うリスクがあるということです。代表的な例としては、次の2つがあげられます。

① 現地子会社がPE認定されるリスク
現地子会社が日本の親会社から独立して業務を行っているにもかかわらず、海外税務当局が税務調査において、「当該子会社は事業リスクをとっておらず、親会社の単なる取次業務を行っているに過ぎない」として、親会社のPEであると認定するケース。

② 営業活動を行っていない駐在員事務所がPE認定されるリスク
情報収集などを目的に、営業活動を行なわない駐在員事務所を海外に設置したにもかかわらず、従業員数が多いなどの理由から、税務調査官が営業活動を行っているとみなし、駐在員事務所をPE認定するケース。


海外税務当局による恒久的施設(PE)認定にどう対応するか?

上記の2つのケースのように、とくに、新興国や開発途上国の税務調査においては、自国産業の育成や外貨獲得を目的に、PEの実態とかけ離れた拡大解釈をし、追徴課税が行われるケースが散見されます。

このようなリスクに対応するためには、進出先国のPE に関する規定や税務調査の執行状況について十分に情報収集を行うことが必要でしょう。

また、親会社と現地子会社との取引内容を契約書で明確にすること、また、現地子会社に親会社から出向者を派遣する場合には、現地子会社と出向者との間で雇用契約を締結すること、など税務調査で証拠として提出できるように文書化を行うことが求められます。

以上
 
 

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。


国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。


主な著書: 「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)、「図解 移転価格税制のしくみ 日本の実務と主要9か国の概要」(共著/中央経済社)、「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)、「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数

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