海外進出企業の国際税務入門

第1回

国際税務とは

山中 一郎 2017年9月1日
 
ここ数年、「うちもいよいよ海外に子会社を作って現地生産・販売をしようと思っています。そこで現地子会社の課税だけでなく、親会社や、親子間の国際税務を検討するように言われました。具体的にはどうすればよいでしょうか?」という類の質問をよく受けます。

国際税務とは、国境を超える経済活動、つまりクロスボーダー取引に対する課税をいいます。このような課税関係を検討するにあたっては、まず、所得が発生する国での課税関係に着目します。次にその課税を踏まえて所得を受取る国での課税関係を考えます。とりわけ所得の発生国と受取国で二重課税を受けないように注意することが必要です。両国の間で租税条約がある場合には、それによる税金の軽減・免除規定の有無も確かめなければなりません。

国際税務の検討は、クロスボーダー取引について、所得発生国、及び、所得受取国での課税、そして租税条約における取扱いを総合的に考察するプロセスということができます。

ここで、外国に子会社を設置して海外ビジネスを展開する場合、クロスボーダー取引としては、子会社への資本出資や融資、事業設備など有形資産の賃貸、特許権など無形資産のライセンス、事業サポートなどの役務提供、商品・製品など棚卸資産の販売、及び、株式等の資産の譲渡取引などがあげられます。

これらの取引から、親会社、外国子会社のそれぞれに、様々な課税関係が生じます。企業グループ内に二重課税が発生する場合には、外国税額控除制度や外国子会社配当益金不算入制度の適用を検討する必要がありますし、租税条約の適用の有無を調査したりする必要があるでしょう。

また、最近、不当な国際的租税回避行為が問題視されていますが、その防止のために、移転価格税制やタックス・ヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)などが導入されています。これらの制度をよく理解し、コンプライアンスの遵守に努めることも重要です。

とくに、日本の課税当局は、平成28年10月に「国際戦略トータルプラン~国際課税の取組みの現状と今後の方向~」を公表し、国際取引を通じた不正な「国内所得の海外流出」防止を重要課題として位置づけ、行動しています。海外進出企業は、国際税務に精通し、所得計算やコンプライアンスに係る問題が生じないよう、体制を整えることが望まれます。

これから、シリーズで、日本の税制を中心に、国際税務のポイントを解説して行きます。なお、具体的決定や行動を起こす際は、事前に必ず、貴社の顧問税理士、弁護士などそれぞれの分野の専門家にご相談下さい。

以上

 
 

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。


国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。


実績:「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務 インドネシア・タイ・フィリピン・ベトナム」、「図解グループ経営の法務・会計・税務」、「なるほど図解M&Aのしくみ」(以上、中央経済社発行)、その他多数。朝日税理士法人HPにブログを掲載中

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