ドラッカーから起業を学ぶ

落藤 伸夫

第32回

マネジメントのシステム化

 
「ひとつお聞きして良いですか?」

「もちろん、何なりと。」

「起業して一年、少しずつながら事業が軌道に乗ってきて、マネジメントの負担が重くなってきていると感じるのです。お役所から、特に従業員雇用についての要求も増えてきて、課題が多様化する一方で、レベルも高まっていると思うのです。」

「おっしゃること、分かります。」

「どうしたら良いのでしょうか?」

「ドラッカーは、マネジメントのシステム化を勧めています。『新しい問題に取り組むための能力は、システムによって物事を単純化することで実現されている』と述べています(現代の経営P.291)。この考え方が、使えるかもしれませんね。」

「マネジメントのシステム化ですか?どのような考え方でしょうか?」


一度行ったことを再現できるよう仕組み化する

「私は、一度行って成功した方法を今後も再現できるように仕組みを作るよう、ドラッカーは勧めているのではないかと考えています。」

「仕組みですか?」

「マネジャーは今までないほど様々な課題を、高いレベルでこなすことが求められています。一方で、これらの課題に対応して人間が急速に進化しているわけではありません。とすると、何か対処しなければならない課題が生じた場合には、最初はひとつひとつ、多大な努力を注ぎ工夫しながら対応するしかないと思われます。」

「そう言われてみると、そうですね。」

「一方で、次に同様の課題が出た時に、前回の努力や工夫が活用できるかで、パフォーマンスは大きく左右されます。」

「確かに。活用できれば、パフォーマンスは数段、向上できるでしょう。」

「それを狙うよう、ドラッカーは勧めているのです。そして、その方法論がシステム化です。」

「ITシステムを使うのですか?」

「そう言われるのではないかと思いました。だから『仕組み化』と言い換えたのですよ。ITシステムも仕組みの一種ですが、ここでいうシステムは、もっと柔軟なものです。」

「どういうことか、教えてください。」


マネジメント上の問題が生じた時

「マネジメント上の問題が生じた時、それも今まで経験したこともなかったような問題の時、どんなことが生じるでしょうか?」

「最初は大混乱ですよね。今まで経験したことのない現象ですから。あたふたするしかない訳です。」

「それから一歩進めると、何が生じるでしょうか?」

「冷静に現状分析するしかないという意見が出るでしょうね。最初は、今起きている現象に関する情報が集まってくるだけでしょうけれど、それを重ねているうちに、原因への仮説が立てられ、検証されていくと思います。」

「そうですね。その次はいかがですか?」

「原因が分かれば、対策が立てられます。」

「それだけで良いですか?」

「対策を具体的に進める計画を立てますね。そして、それを実行する責任者を決めて、取り組んでもらいます。」

「そうですね。」


過去事例を活かす仕組み

「今、言ってもらったことを仕組み化しようと思います。どうすれば良いですか?」

「なるほど。問題が発生した場合の対処方法は一定のプロセスがあるので、それをきちんと行えるように、何か仕掛けを考えておくのですね。」

「そういうことです。どうすれば良いですか?」

「想定外の問題が生じても、慌てふためく時間をできるだけ抑えて、すぐに現状把握に取り掛かるようにします。」

「どうやって、それを仕組み化しますか?」

「問題発生時にはまず何を把握すれば良いのか、以前の経験を踏まえて、項目を定めたフォーマットを準備できるかもしれません。」

「良いですね。次は、どうですか?」

「集められた情報をもとに、素早く原因究明ステップに移るように促します。仮説を立て、検証するように促す訳です。」

「ここでも、フォーマットが役立ちそうですね。」

「確かに。プラス、過去の事例が保存されていれば参考になるでしょうし、仮説検証のやり方をマニュアル化することもできるかもしれません。」

「良い考えですね。」

「実施計画や責任者の任命も手順化して、時間を浪費せずに実施できるように促すことができそうです。」


システム(仕組み)化とは

「こうやって考えてみると、マネジメントのシステム(仕組み)化を、どのように行うことができるでしょうか?」

「対応手順を決めておくことは、システム化の基本のようですね。」

「そうですね。」

「改良しながら使ったフォームなどを、次にもすぐに使えるようにまとめておくこともできそうです。」

「なるほど。」

「それから、知り得たノウハウをマニュアルなどで残しておくこともできます。」

「良いですね。」

「なるほど。そうやって、自分たちの努力や工夫を手順やフォーム、マニュアル等にまとめて引き継ぐことで、そのノウハウを仕組み化できるのですね。是非、取り組んでみようと思います。」

2016年12月19日

 
 

プロフィール

StrateCutions (ストラテキューションズ)
落藤 伸夫


(StrateCutions代表)ドラッカー学会会員
中小企業診断士を目指していた平成9年にドラッカーに出会って以来、ドラッカーの著書をいつも座右の銘にしてきました。MBAを取得し、コンサルタントとして活動するにあたっても、企業人が考え行動する基本はドラッカーにあると感じています。ドラッカーの教えは、時には哲学的に思えることがありますが、企業が永らく繁榮するとともに、社会にある人々が幸福になることを目指していると思います。お客さま、社会、そして自分自身の「三方良し」の構図を作り上げることにより起業の成功を目指すドラッカーの知恵を、お楽しみ下さい!

<著書>
『ドラッカー「マネジメント」のメッセージを読みとる』

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