知らなかったでは済まされない著作権の話 vol.4

第5回

WEBやアプリの画面デザインは著作権で保護されないの!?~創作性にまつわる話

堀越 総明 2016年5月16日
 

新進デザイナーが超大手ゲーム会社からアプリの画面デザインを受注


WEB制作会社「イノベーションファクトリー」を経営するデザイナーのA社長。トレンドを的確に捉えた画面デザインが評判で、まだ20代ながら、ついに念願の青山に事務所を構えることができました。事務所の窓から渋谷のビル群を眺めながら、A社長はアシスタントのBさんに話しかけました。
A社長 「Bくん、あれがマークシティだよ。」
Bさん 「社長、うれしいのはわかりますけど、そんな『東京だヨおっ母さん』みたいなこと言わないでくださいよ!」
A社長 「いやー、でも名刺の住所も“港区南青山”だと箔がつくし、これからもすごいWEB画面をどんどんデザインするぞー。」
Bさん 「それにしても社長のデザイン力は本当にすごいですね。最初は、小さな会社からの注文ばかりだったのが、ついに上場企業からも注文が来るようになって。ところで、社長はゲームアプリのデザインはやらないんですか?」
A社長 「ゲームアプリか~。オレ、ゲームってあまり好きじゃないんだよね~。」

そんなある日、イノベーションファクトリーに1本の電話が掛かってきました。電話に出たBさんは、相手が超大手ゲーム制作会社のC社と聞いて、興奮しました。
Bさん 「社長、C社がウチにゲームアプリのグラフィックデザインを外注したいそうです。でも、社長はゲームが嫌いなんですよね。お断りしておきましょうか?」
A社長 「Bくん!ボクは、ゲームはあまり好きじゃなくても、超大手ゲーム制作会社のC社様は大好きなんだよ!」

他社が受注した続編ゲームのグラフィックデザインが自社のデザインとそっくり!


A社長がデザインしたゲームアプリ“ツッパリ学園天国”のグラフィックデザインは、これまでのWEB画面同様に、すばらしい出来映えで、C社も大満足です。ゲーム内容の面白さと相まって、ダウンロード数は順調に伸び、イノベーションファクトリーには続編の注文も舞い込んできました。
喜ぶA社長とBさんでしたが、間もなくC社の担当者からメールが届き、続編については見積もりを大きく下げるように要求されてしまいました。
Bさん 「社長・・・、この見積もりじゃ利益は出ませんよ・・・。」
A社長 「ウチは青山のデザイン会社だぞ!甘く見るなよ!こんな仕事、お断りだ!」

それから数か月後、仕事に励むA社長に向かって、スマホをいじっていたBさんが驚きの声を上げました。
Bさん 「社長、見てください!!“ツッパリ学園天国2”が発売になってるんですが、ウチで作ったデザインが使われてます!!」
A社長 「ほ、本当か!?」
Bさん 「教室でツイストを踊っているところなんか、ほとんど同じですよ!」
A社長 「C社め~、オレのデザインを著作権侵害してこのまま済むと思うなよー!」


真似された部分が平凡でありふれた表現の場合は著作権侵害にはなりません


A社長がアイデアを振り絞って制作した“ツッパリ学園天国”のグラフィックデザインをもとに、C社は、おそらく別のデザイン会社に外注して、続編ゲーム“ツッパリ学園天国2”のグラフィックデザインを制作させたのでしょう。A社長の怒りはごもっともです。それでは、このようなC社の行為は、A社長の著作権を侵害したことになるのでしょうか?

著作権で保護されている「著作物」とは、著作権法で「思想又は感情を創作的に表現したもの」と規定されています。A社長による“ツッパリ学園天国”のグラフィックデザインは、A社長がアイデアを振り絞って制作したものなので、おそらく「思想又は感情を創作的に表現したもの」として、著作物に該当するものと思われます。

しかし、“ツッパリ学園天国2”のグラフィックデザインは、A社長による“ツッパリ学園天国”のグラフィックデザインをベースにしていますが、“ツッパリ学園天国”のグラフィックデザインをデッドコピーしたものではありません。
この場合に、A社長がC社に対し著作権侵害を主張できるためには、“ツッパリ学園天国”のグラフィックデザイン全体が著作物であるだけでは足りず、“ツッパリ学園天国”と“ツッパリ学園天国2”とのグラフィックデザインにおいて共通している部分が、著作物性のある部分といえなくてはなりません。

A社長はアイデアを振り絞って、ゲーム画面の隅々までデザインしているわけですから、両ゲームのグラフィックデザインの共通部分においても、A社長の何らかの「思想又は感情」は表されていることでしょう。また、抽象的なアイデアに止まらず、A社長は、その思想又は感情を、グラフィックデザインに具現化しているので、具体的に「表現」しているともいえると思います。
しかし、そのグラフィックデザインの共通部分が「平凡でありふれたもの」であったとしたら、それは「創作的」とはいえないため、残念ながらその共通部分については著作物性がないとされてしまうのです。

既存のゲームに度々使われている表現は平凡でありふれたものと考えられます


それでは「平凡でありふれたもの」とはどういうことでしょうか?
一番わかりやすい例として、それまでの学園ものゲームアプリにすでに度々使われていたデザインがあげられます。教室、廊下、屋上、校庭、黒板、制服などの基本的なモチーフの表現はもとより、「教室でツイストを踊っている」など奇抜な表現でも、その表現がすでに色々なゲームアプリに使用されていた場合は、「平凡でありふれたもの」とされてしまうことがあります。

これはWEB画面のデザインでも同様です。一般的なホームページ等のWEB画面を構成するタイトルや見出しの画像の形状や配置などはパターンが限られているため、他人に模倣されたとしても、その模倣された部分は、通常は「平凡でありふれたもの」とされてしまうことがあります。
ただし、WEB画面やゲームアプリのグラフィックデザインにおいて、模倣された個々のパーツのデザインが平凡でありふれたものであったとしても、それらの組み合わせに特徴がある場合には、創作性が認められるといったこともあります。

さて、“ツッパリ学園天国2”ですが、A社長が著作権に詳しい弁理士に相談したところ、「教室でツイストを踊っている」などの両ゲームに共通する表現は、これまでの学園ものゲームアプリに度々登場する表現であることがわかりました。そのため、両ゲームのグラフィックデザインの共通部分はすべて「平凡でありふれたもの」であると考えられ、A社長は泣く泣くC社に対し著作権侵害を主張することをあきらめました。その後、A社長はこれまで以上にゲームが嫌いになったということです。


※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。
 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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