知らなかったでは済まされない著作権の話 vol.4

第3回

2人の連名で出版した本の著作権は2人のもの??~共同著作物にまつわる話①

堀越 総明 2016年2月4日
 

有名イラストレーターとの連名で出版した自然エネルギーの本がベストセラーに!


自然エネルギーのベンチャー企業を経営するAさんは、創業以来5年間、全国を飛び回り、遊休地を探しては、そこに太陽光パネルや風車を建ててきました。1年前に初めてテレビの取材を受けてからは、全国から契約を申し出る遊休地のオーナーさんが激増し、売電事業の業績は順調に伸びています。

“自然エネルギーの革命児”としてその後もしばしばテレビ出演するAさんは、自分の知名度を利用して更に会社の業績を伸ばそうと、自然エネルギーに関する本の出版を思いつきました。専門分野なので原稿はあっという間に書き上げたのですが、売れる本にするためには気の利いた挿絵が必要です。
Aさん「そういえば親友のBは有名なイラストレーターだったな。久しぶりに電話でもしてみるか。」
AさんがBさんに電話すると、Bさんは、売れっ子で忙しいにもかかわらず、本の挿絵を描くことについて、二つ返事で引き受けてくれました。

ほどなくBさんのすてきな挿絵も完成しました。その挿絵の出来があまりにも良かったことと、Bさんの知名度も利用したいという思いもあり、Aさんは、本を2人の連名で出版することをBさんに提案しました。そして、AさんとBさんの本「自然エネルギーレボリューション-序章-」は、無事出版されることとなりました。
電力小売自由化の流れを受けて、「自然エネルギーレボリューション-序章-」は評判を呼び、大手書店で平積みされるほどのベストセラーになりました。

共同著作者に無断で本の文章をインターネットに掲載!?


そんなある日、自然エネルギーを専門とする電力小売会社C社のD社長が、Aさんのもとを訪ねてきました。
D社長 「いやー、読みましたよ、『自然エネルギーレボリューション-序章-』!Aさんの自然エネルギーに対する熱い情熱に感動しました!」
Aさん 「それは、ありがとうございます。」
D社長 「いやウチの会社も自然エネルギーを評価してくれる人たちから順調に小売の契約をいただいてましてね。というわけで、今日は、御社からも是非自然エネルギーを供給していただきたいと思ってお伺いしました。」
Aさん 「それは、ありがとうございます!」
D社長 「それからもうひとつお願いなんですが、『自然エネルギーレボリューション-序章-』をウチのホームページに連載形式で掲載させてもらえませんか?そうなれば、ウチのホームページのアクセス数は増えて、わが社の契約者数は伸びるでしょうし、続きを早く読みたいという人は本を買うでしょうから、まさにウィンウィンになるでしょうな。」
Aさん 「それは、ありがとうございます!!是非よろしくお願いします!」

D社長の考えた通りに、C社のホームページは大きな注目を集め、C社の契約数も、「自然エネルギーレボリューション-序章-」の販売部数も伸びていきました。
そんな折、AさんのもとにBさんから電話が掛かってきました。
Aさん 「おおB、おかげさまで本の売上は順調だよ。C社のホームページに掲載した効果も大きかったな。」
Bさん 「おいA!何勝手なことしてんだよ!オレは一言もC社のホームページに掲載していいなんて言ってないぜ!!」
Aさん 「えっ!?でも、C社のホームページに掲載してるのはボクの文章だけで、キミの挿絵は掲載していないんだよ。」
Bさん 「あの本は、おまえとオレの連名で出版したんだぞ!そういうのを共同著作物っていうんだ!だから、あの本の著作権は、おまえとオレの共有になるんだ。共有者に無断で、あの本をC社のホームページに掲載したお前の行為は、立派な著作権侵害だからな!!」


「文章」と「挿絵」のように個別的に利用できるものは共同著作物ではありません


Bさんは、親友のAさんのためと思い、忙しい時間を割いて、挿絵を描いたのでしょうから、それ故に、Aさんが自分に無断で、2人の連名の本をC社のホームページに掲載してしまったことが許せなかったのでしょう。その気持ちはよくわかります。では、「自然エネルギーレボリューション-序章-」は、Bさんの言う通り、本当にAさんとBさんの共同著作物なのでしょうか?

共同著作物とは、2名以上の者が共同して創作し、その結果としての作品に対する寄与を分離して、個別的に利用できないものをいいます。
「自然エネルギーレボリューション-序章-」は、文章をAさんが創作し、挿絵をBさんが創作しました。確かに連名で出版しているので、この本は一見するとAさんとBさんの共同著作物のようですが、Aさんの「文章」とBさんの「挿絵」は明確に区別できますので、この本に対する2人の「寄与」は明らかに「分離」することができます。また、Aさんが、自分の書いた文章のみをC社のホームページに掲載したことからもわかるように、この本の「文章」と「挿絵」はそれぞれを「個別的に利用」することができます。ということで、「自然エネルギーレボリューション-序章-」は、2人の共同著作物ではなく、文章部分はAさんの著作物、挿絵部分はBさんの著作物ということになるのです。

本の「文章」と「挿絵」に似たような関係で、音楽の「詞」と「曲」があります。音楽に対する作詞者と作曲者の寄与も分離することができ、「詞」と「曲」はそれぞれを個別的に利用することができます。ということで、ピンクレディーの「ペッパー警部」は、その詞は阿久悠さんの著作物、曲は都倉俊一さんの著作物ということになり、決して音楽全体が2人の共同著作物というわけではないのです。

共同著作物の場合はもう一方の共同著作者に無断で利用することができません


共同著作物とは、2人のアーティストが交互に筆で描いて完成させた1枚の絵画とか、2人のアーティストが一緒に作曲して完成させた楽曲のような場合があてはまります。著作物は著作者の人格に根差したものなので、このような場合は、それぞれの著作者がその共同著作物を好き勝手に利用することにより、もう一方の共同著作者の人格を傷つけるような結果を招くことが起きかねません。そこで、共同著作物の場合は、それぞれの著作者はお互いにもう一方の共同著作者の許諾なくして、その共同著作物の利用ができないということになっているのです。

ただ「自然エネルギーレボリューション-序章-」は共同著作物ではありませんので、Bさんにとっては残念ながら、Aさんは自分の著作物である「文章」については、Bさんの許諾を得ることなく、自由にC社のホームページに掲載することができるのです。

Aさんは、知り合いの行政書士に相談して、自分の行為がBさんの権利を侵害していないことを確認しましたが、古くからの友情を大切にするため、道義的にBさんに謝ることとしました。Bさんも、本の大ヒットで気が悪いはずもなく、今夜は居酒屋で2人、「自然エネルギーレボリューション-第二章-」の構想を語り合っています。


※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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