2025年のリーダーのための新常識

第9回

keyword8:マテリアリティ ~ 会社の軸を問いかけ続ける

広石拓司 2017年4月24日
 
変化が激しい時代、そして、ただ財務的な成功だけでなく多面的な視点から経営を考えていく必要が高まる時代に問われるのは、会社の「軸」となるものです。 
何が会社の軸となるのか考えるキーワードとして、「マテリアリティ(materiality )」が注目されています。materiality とは「意味が大きいこと・必要不可欠」といった意味です。 

もともと、この用語が広がるきっかけとなったのは、企業のアカウンタビリティを専門とするイギリスの非営利団体「AccountAblity」の「マテリアリティ・レポート」です。  

企業にとって、「成功するために何をするか」が最も大切なことですが、それには、経営の戦略やマネジメント(内部環境)と、新たな社会・環境の状況(外部環境)の方向性があっていないといけません。社会・環境の何が制約か、どのような新しい収益機会が生まれているのかは絶えず変化しているため、外部環境に敏感になり、内部環境を適応させていくことが重要になります。  
ただ、外部環境も内部環境も要素が多く、どう結び付けていけばいいかは難しい問題です。 
その時に、必要なのは議論の軸です。いったい自分たちは何を最も大切にするのかを明確にすること(=マテリアリティの特定)が必要です。それが明確になることで、ただ変化への対応に追われるだけでなく、変化を学びと改革の促進に活かすことができます。 

ただし、マテリアリティは経営者が認識しているだけでは実行できません。 
社内にもステークホルダーにも、納得し、力を合わせていけるように、なぜそれが大切なのか信頼できる方法でそれを明確に示さなければならないのです。 

それゆえ、何がマテリアリティか定めること以上に、下記のようにマテリアリティを使いこなすことが求められています。 
 ・持続可能な発展の課題と経営戦略の整合性を明確にするプロセスを重視する 
 ・企業とステークホルダー双方にとっての優先事項を積極的に反映した企業報告書、広範なコミュニケーションに取り組む  
 ・新たな社会的諸課題と現在の経営戦略とのギャップを特定して、社内での議論や戦略展開に反映させる 
 
ここで重視されているのは、変化する社会・経済・環境の中で、持続可能な企業を実現するために、何が大切か、社内で、また、ステークホルダーとコミュニケーションを続けることです。  

経済も社会も環境も変化する時代には「今、力を入れるべきこと」は変化し続けます。  
「自分たちの大切なことは、これだ」という答よりも、常に考え、コミュニケーションを続けることが大切になってきています。 

かつては、「自社の強みはこれだ。重視することはこれだ」と明確にでき、それは大きくは変化しませんでした。 
しかし、社会の状況の変化が、会社の経営にも大きな影響を与える時代、「一度、決めたこと」にこだわり続けると、気づかない間に取り残され、大きな損失を生み出すかもしれません。 

大切なことを決めるよりも、大切なことをコミュニケーションし続けることが、これからのリーダーには求められるのです。 

 
 

プロフィール

株式会社エンパブリック
代表取締役 広石 拓司


1968年生まれ、大阪市出身。東京大学大学院薬学系修士課程修了。シンクタンク(三和総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング))勤務後、2001年よりNPO法人ETIC. において社会起業家の育成に携わる。 2008年株式会社エンパブリックを創業。「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会」を目指し、地域・組織の人たちが知恵と力を持ち寄る場づくり、仕事づくりに取り組むためのツールと実践支援プログラムを開発・提供している。自社の根津スタジオ、文京ソーシャルイノベーション・プラットフォーム、すぎなみ地域大学、企業のコミュニティ力向上プログラムなどにおいて、年200本のワークショップを実施。 書籍「共に考える講座のつくり方」」、日経Bizアカデミー連載「「ソーシャルビジネスが拓く新しい働き方と市場」など執筆多数。 慶應義塾大学総合政策学部、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科などの非常勤講師も務める。

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